皆さん、「不妊治療」ってどんなイメージですか?
『大字基山』編集部ライターの岩下です。
私は、4年間、不妊治療を経験しました。結婚当初は「すぐできるんじゃないの?」という考えでしたが、実際は妊活、とても大変でした。
そして、今となっては「知っていたら、もっと早く行動していたのに!」という事も、たくさんあります。
当事者になってはじめて分かることが多い、不妊治療の実情。2022年4月には、治療費が保険適用になるなど、国策として妊娠を支援する制度がどんどん変わってきています。
そこで、ぜひ最新の不妊治療の知識を身に着け、行動やサポートに繋げてもらいたい!
複数回にわたってお届けする連載企画、第1回目の今回は不妊治療の基本を解説していきます。
実は、お母さんの年齢によって、異なる妊活プラン。
「赤ちゃんを授かりたい」という想いは同じでも、20代、30代前半、30代後半、40代、それぞれの年代によって、治療の進め方は変わってきます。
なぜかというと、加齢とともに、卵子の数と質は低下するから。卵子の数は30代半ばから急速に減り、質もどんどん低下していくことが分かっています。
また、加齢に伴って子宮内膜症などの疾患も増え、女性特有のトラブルもでてきます。
どんな治療を受けるか、どのように治療を進めていくか、パートナーとの話し合いが大事ですが、「1日も早く」「時間を無駄にしたくない」と考えるなら、年齢に合った妊活をすることが大切です。
日本国内で行われている不妊治療には、いくつか方法があります。年齢や体質などに合わせて、専門医と話し合いながら、妊娠を目指して少しずつ高度な治療へと進めていくことになります。
例えば36歳から妊活を始めた私は、タイミング法半年、人工授精7回、体外受精6回の経験があります。
排卵を予測して、成功のタイミングを指導する方法。
排卵の予測には、基礎体温、超音波検査による卵胞の大きさの計測、血中・尿中の黄体化ホルモン(LH)値などが用いられます。
排卵2~3日前から性交が、より受精率を高めると言われています。さらに、内服薬や注射で排卵をうながす排卵誘発法もあります。
排卵時期に、精子を直接子宮内に注入する方法です。
精子提供者自身が採取した精液は洗浄・濃縮され、良好な運動精子を選別し、膣からカテーテルを挿入して子宮の奥まで送り込みます。この時、夫の精子を使用する「配偶者間人工授精(IUI-H)」と、精子提供者の精子を使って行う「非配偶者間人工授精(IUI-D)」があります。
IUI-Dは、夫が無精子症あるいは精子に遺伝子疾患があるときに実施され、日本では限られた病院のみで行われています。
卵子と精子を体外にとり出して受精させる一連の操作のこと。
採卵数を増やす目的で、排卵誘発が行われるのが一般的です。多胎妊娠を予防するために、原則として良好発育胚1個を移植するが、なかなか妊娠に至らない場合は2個移植を選択することもあります。
顕微鏡下で、1個の精子を直接卵子の中に注入して受精させる方法。正式名称は、卵細胞質内精子注入法。
精子減少症、精子無力症、受精障害などの男性不妊の場合に用いられることが多いです。
卵子と精子を体外にとり出して、受精させます。その後、受精卵を一時的に凍結させ、女性の子宮内の状態が良好である際に、受精卵を融解させて移植する方法です。
妊活は、終わりの見えないトンネルのようなものです。
残念ながら、努力すれば必ず成功するというものでもありません。ですから、不妊治療がどのくらい長くなるのかは、誰にも分かりません。
治療が長期戦になると体力的・精神的にも辛くなる傾向がありますので、妊活はスピーディーに進めることが肝心です。
ほぼ自然妊娠に近いタイミング法から、精子を直接子宮内に注入する人工授精に移行すると受精がより簡単になる!という発想は、どうやら間違い。
~34歳 | 10~15% |
35~37歳 | 約10% |
38~39歳 | 約8% |
40歳~ | 6%弱 |
1回あたりの成功率は、最大でも15%ほどのようです。
女性の身体に負担がかかる治療となる、体外受精や顕微授精。その成功率は、35歳を超えると50%以下になっていきます。
~34歳 | 60~75% |
35~37歳 | 約50% |
38~39歳 | 約30% |
40歳~ | 約20% |
妊活を始めてから実際に妊娠するまでの期間は、カップルによって異なります。半年ほどで妊娠する人もいれば、5年以上治療に取り組む人もいます。
不妊治療は、夫婦で「流産」と向き合うことでもあります。悲しいことですが、可能性として「ない」わけではありません。
38~39歳 | 30% |
40~41歳 | 40% |
42歳~ | 50% |
年齢とともに流産率は上がっていき、女性の負担も大きなものに。夫婦間でのコミュニケーションや、精神的なサポートも大切になっていきます。
いつか赤ちゃんが欲しいと考えているなら、年齢や体質と相談しながら、早めの計画が肝心です。
年間通じて、妊活に取り組んでいる人は、実際にどのくらいいるのか?
日本産科婦人科学会による最新の報告によると、2020年の不妊治療実績件数(※治療周期総数)は約45万件でした。
※治療周期数とは、月経開始から次の月経開始までを1 周期ととらえ治療する回数のこと
また、治療を受ける女性の年齢ピークは、40歳。全体的な治療実績件数は、27歳頃から上昇し40歳をピークに47歳頃まで減少していきます。
ただ、40歳は不妊治療を受ける人が最も多い一方で、流産数も最も多い年齢となっています。治療によって妊娠や出産に至る”成功”件数は、高齢出産の境目となる35歳が最も多くなるという特徴があります。
44歳以上は、逆に妊娠・出産の件数よりも流産件数が上回ってしまいます。
妊活を始めるにあたって、産婦人科を選ぶ際のポイントは、受診する時の年齢です。
30代前半であれば、タイミング法や人工授精をおこなっている産婦人科にまずは通ってみましょう。
そして、卵子の数と質は低下してくる30代後半で産婦人科に通うのであれば、体外受精や顕微授精をおこなっている専門の産婦人科の受診がおすすめ。
40代であれば、少しでも早く、専門の産婦人科での妊活をスタートしましょう。
病院によっては、「成功報酬制度」が適用される場合もあります。妊活の金銭的な負担を減らすために、成功報酬制度が利用できる産婦人科を探すのも、選択肢の一つです。
また、不妊治療専門の産婦人科の場合、ほぼ無休・365日開業しているところもあります。自分の身体のタイミングで通える病院は、妊活に取り組む際は安心感があります。
近年では、出産や子育てだけでなく、妊活を応援する自治体も増えていきています。
次回は、佐賀県および基山町の妊活支援に関して、2024年春の最新情報をまとめていきます。
2024年6月23日(日)まで、基山町近郊在住の女性を対象に、利用している・利用経験のある産婦人科病院についてアンケートを実施しています。
不妊治療経験の有無や、通院した病院情報などもお聞きしています。
ぜひ、皆さんの経験を地域の暮らし情報に役立てるべく、多くの方に回答をご協力いただけますと幸いです。