2020年4月14日、佐賀県鳥栖市弥生が丘にある総合病院「やよいがおか鹿毛病院」の入り口付近に、オレンジ色の特設テントが設営されました。
一際目立つこのテントは、「検温ブース」。来院者は病院関係者を含め全員、必ずこのテント内で体温チェックを受けなくてはなりません。
鹿毛病院は、一般的な診療・治療・手術後のケアまでを担う佐賀県東部の地域医療の最前線。
新型コロナウイルス感染症から来院患者・入院患者・医療従事者を守るため、そして感染拡大を食い止める取り組みが始まっています。
発熱症状があって受診を希望する来院者、そしてテント内で37.5度以上の発熱が確認された来院者は、自家用車などでの待機を求められます。どんな理由であれ、病院の正面玄関をくぐることはできません。
それでは、発熱症状がある来院者は、どこで診察を受けるのか?
やよいがおか鹿毛病院では、発熱患者と一般患者との接触を極力避けるために、平日午後のみ「発熱外来」が始まっています。
実はこれまで、独自にDMAT(災害現場で活動するトレーニングを受けた医療チーム)を結成し、東北や熊本の災害現場で活動した経験を持つ、やよいがおか鹿毛病院の医療スタッフたち。
正面玄関に登場した大型テントは、そんな災害現場でも使われている医療用の本格的なもの。所有する2つのテントのうち1つを検温ブースに、もう1つを発熱外来として使っています。
佐賀県東部地区の災害拠点病院として、やよいがおか鹿毛病院には有事に備えた備蓄倉庫があります。
新型コロナウイルスによるパンデミックという事態を受けて発熱外来が設営されたのは、そんな備蓄倉庫の中。
徹底して院内感染を防ぐ対策のリーダーシップをとったのは、八戸宗典さん。さまざまなシチュエーションで感染症の拡散を防ぐ専門知識を備えた、医師とは違う視点で感染症と戦う、感染管理認定看護師です。
八戸さん
「発熱外来を担当する医師をはじめスタッフは、日本環境感染学会による新型コロナウイルスのガイドラインに沿った感染予防を徹底しています」
発熱外来では新型コロナウイルスを想定し、スタッフ全員が防護服やシールドを着用。またウイルスを一般外来に持ち込まないように配慮した検査ルートを確保して、診察に当たります。
一方、発熱患者は自家用車で、もしくは倉庫内テントで、防護服に身を包んだ医師による問診やパルスオキシメータによる経皮的酸素濃度のチェックなどを受けることになります。
そして、症状に応じて血液検査やインフルエンザ検査、さらに肺炎が疑われる場合はレントゲン撮影やCT検査も行われます。
この発熱外来での診察の結果、各種所見に基づいて医師が「新型コロナの疑いあり」と判断した場合に限って、PCR検査が行われることになります。検体は鼻腔から採取し、保健所を経由して専門機関に送られます。佐賀県内の場合、結果が出るまでは1〜2日かかるため、しばらくは自宅待機が求められます。
これまで、やよいがおか鹿毛病院の医師の判断でPCR検査が行われたのは8例(2020年5月1日現在)。そのうち1例が陽性と判明しており、佐賀県が指定する病院に速やかに搬送され、入院しています。
現時点で、佐賀県で新型コロナウイルス陽性患者が入院できる病院(感染症指定医療機関)は、全部で5つ。
県の主導のもと、専用の病床を増やす取り組みも始まっていますが、いずれも鳥栖・基山エリア外になるため、患者やその家族には準備と心づもりが必要です。
なお、県は疑いのある受診者が専用外来に殺到すると十分な感染防止に備えられないとして、指定病院の名前は公表していません。
感染症指定医療機関ではない一般病院は、保健所に相談した結果「新型コロナウイルスの可能性が低い」と判断された風邪症状のある人や、発熱を含むさまざまな症状を訴える人が受診します。
今のところ、佐賀県東部で一般病院を訪れる患者の多くは、普通の風邪やインフルエンザ、胃腸炎などのよう。新型コロナウイルス感染者ではあることは滅多にありませんが、病院側は「万が一」を考えなくてはなりません。
八戸さん
「発熱症状がある場合は、必ず受診する前に病院に電話してください。病院側にも準備が必要です」
熱がある場合は、病院への電話連絡は絶対に必要です。発熱時の受診方法は、最寄りの総合病院やかかりつけ医に問い合わせてみましょう。
やよいがおか鹿毛病院には発熱外来があるため、診察の事前予約を受け付けています。予約枠は午後の診療時間に、30分につき2名までです。
発熱外来の受診にかかる時間は、自家用車内での問診を含めて30分ほど。詳しい検査を行う場合は、待ち時間を含めて1〜2時間ほどを見込んでおいたほうが良さそうです。
新型コロナウイルスに感染していたらどうしよう?
どんな時に病院を受診していいの?
発熱外来を受けた結果、もしも新型コロナウイルス陽性だったら?
そんな万が一に備えて知っておきたい、受診までの判断基準や求められる行動、心づもりについて、やよいがおか鹿毛病院の発熱外来を担当するお医者さんにも、詳しい話をうかがうことができました。
佐賀県内でも緊張が続いています。皆さんの、今後の行動の参考にしてみてください。
取材・文章:江藤裕子