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【佐賀地域医療の現場から】新型コロナ診断から入院まで、知っておきたい本当のこと

2020年5月。新型コロナウイルス感染者が日本国内で初めて報告されてから、3ヶ月以上が経過しました。

都心部を中心に全国各地で感染者が身近なものになり、経済活動の自粛が本格化する一方で、普段から感染対策をしっかりしている人でも経路不明で発症するなど、「まさか」の事態が起こるケースも。

そんな世界的パンデミックの波は、もちろん、佐賀県にも押し寄せつつあります。

「私が、家族が、新型コロナウイルスに感染したら?」

そこで、大字基山編集部が取材を申し込んだのは、鳥栖市と基山町の住民にはおなじみの総合病院「やよいがおか鹿毛病院」。

およそ350年前、江戸時代中期に開業したという長い歴史をもつ、佐賀県東部を代表する地域医療の担い手です。

入り口に検温ブースが登場した地域の総合病院

実際に、佐賀県東部の患者が新型コロナの陽性診断を受けるまでと、入退院までの流れ、事前に準備しておきたいこと。

やよいがおか鹿毛病院の呼吸器外科医師、岩田輝男先生に「患者さんに知っておいてほしいこと」をお聞きしました。

新型コロナウイルス感染症に多いとされる症状

岩田先生によると、新型コロナウイルス感染症は、よくある「風邪」の一種。

そのため、健康な人の中には無症状であったり、ちょっとした喉の違和感、ちょっとお腹の調子が悪い…そんなレベルで完治してしまうケースも。海外では、新型コロナ陽性患者の30〜80倍の無症状者がいるという調査結果も報告されているんだとか。

一方で、悪化すると命に関わる肺炎を起こす、油断できない感染症であることも確か。

よくある症状例は、8割が発熱(7.5℃以上の発熱が4日以上続く)、咳(痰は少なめ)、3割には下痢など消化器への影響も見られるそう嗅覚・味覚がなくなるという例も多数報告されています。肺炎になると、息苦しさから呼吸困難も出てきます。

岩田先生

「発症した人だけが新型コロナウイルスに感染しているとは限らない。無自覚な多くの人…例えば、あなた自身も感染していたり、すでに完治している可能性があることも考えておいてほしい」

「ウイルスは目に見えない、くっつきやすい埃のようなもの。虫のように、自分で動くことはできません」

「だから、手を洗ったり飛沫を防いだりして、とにかく身体の中に入れないようにすることが感染予防の第一歩なのです」

ウイルスが体内に侵入するのは、目や鼻、口などの粘膜から。その前提に立って、誰しも手洗いやうがい、マスクの着用、共用部分の消毒、人と人の接触をできるだけ避けることが求められています。

「新型コロナかもしれない」と思ったら

「新型コロナかもしれない」風邪症状が出て、過去に陽性患者と接触していたり新型コロナ流行エリアに出入りしていた場合は、まずは最寄りの保健所(帰国者・接触者相談センター)に連絡しましょう。新型コロナ発症を強く疑われる場合は、佐賀県の指定する病院(感染症指定医療機関)の外来を受診するよう、案内されます。

鳥栖市民・基山町民の場合は仕事先が福岡都市部という人も多く、「濃厚接触者」に当てはまるケースがあるかもしれません。

厚生労働省より

濃厚接触者の定義は「変更後」が最新(新型コロナクラスター対策専門家Twitter

鳥栖保健福祉事務所(佐賀県鳥栖市元町1234-1)

  • 電話:0942-83-2161
  • 対応時間:平日 8時30分~17時15分 ※ただし、緊急の場合は、夜間・土日も含め時間外も対応可能。自動応答メッセージの指示に従うこと。
  • 管轄市町:鳥栖市・基山町・上峰町・みやき町

緊急時には、地理的に近い場所にある福岡県の病院にお世話になることも多い、鳥栖基山エリアの住民。普段あまり馴染みのない、遠方の病院で受診することになりそうです。

佐賀県の新型コロナ陽性患者向け病床の数はおよそ50

一方で、新型コロナに感染した覚えがない場合。数日たっても症状が改善しない・不安が続く場合は、かかりつけの病院に電話で事前に連絡してから、診療を受けましょう。

体調不良、我慢しすぎないで!

岩田先生は、新型コロナウイルスの流行によって「体調不良を我慢して悪化させてしまう人」「熱がなくても不安で診察を受ける人」という、患者の二極化が進みつつあるのではと心配しています。

厚生労働省は、「オンライン・電話診療に対応できる病院リスト」を2020年4月24日から公開中。最寄りの病院に電話して、インターネットや電話を使った簡易的な診察を受けてみるのも1つの手段です。

リストより鳥栖基山エリアの病院のみ一部抜粋、詳細はリンク先を必ず確認してください

さらに、4月27日には、新型コロナウイルス感染症の緊急性の高い症状例も発表されています。高齢者や持病がある人、タバコを吸う人/吸っていた人は、特に注意しておいた方が良さそうです。

厚生労働省「新型コロナウイルス感染症の軽症者等に係る宿泊療養・自宅療養における健康観察における留意点について」より抜粋

一方で、息苦しい気がする、不安感があるから受診したい…そんな気持ちも、医師として理解できるという岩田先生。病院で「普通の風邪でしょう」と診断されて、顔色が一気に良くなって帰宅される患者さんも多いのだとか。

「病は気から」とも言いますが、体調不良は我慢しすぎないことが一番です。

新型コロナPCR検査に至るまで

例えば、やよいがおか鹿毛病院では2020年4月中旬から、すべての来院者を対象にした検温と「発熱外来」を始めています。

鹿毛病院の場合、発熱がある患者は一般外来から隔離された環境下で問診を受けた後、血液検査やインフルエンザ検査、さらに症状に応じて肺のレントゲン撮影やCT検査までを院内で行います。

岩田先生

「診察と検査結果から『新型コロナと強く疑われる』と医師が判断してから、保健所にPCR検査を提案しています」

外来診療で新型コロナ陽性の疑いがあると判断された場合、医師と保健所との話し合いによって、PCR検査に至ります。佐賀県では、医療機関で採取した検体は必ず保健所を経由して、専門機関でPCRが行われています(2020年5月1日現在)。PCR検査は医療保険が適用されるため、無料です。

また、PCR検査を受ける・受けないに関わらず、各種症状に応じた「薬」は処方されます。

新型コロナウイルス感染症はインフルエンザのような治療薬がまだ開発されていないため、多くの風邪と同じく、症状を和らげる薬による対処しかできないのです。

「新型コロナ陰性の診断書」は存在しない

ところで、新型コロナウイルスの感染拡大にともなって、「新型コロナに感染していない(陰性)という診断書が欲しい」という患者さんからの要望が増えているんだそうで…。

岩田先生

「新型コロナに感染していないという診断はできない。医師として陰性を証明できない」

「PCR検査が、100%正しいわけではない。実際に間違った結果を元に対処したことで、感染が広まってしまったケースも国内で報告されています」

新型コロナを疑って外来を訪れる患者さんからよく聞く「診断書が必要」な理由は、家族や勤務先に提出を求められるケースが多いそう。

発熱外来で多くの患者さんの不安と接する機会も増えている、岩田先生。

「企業側の事情も分かりますが、医師は不確実な内容の診断書を書くことはできません。体調が悪い・風邪っぽい症状がある、そんな時はとにかく休むこと!

人に接する機会を減らし、自宅で安静に過ごすことが、人に症状をうつさない・拡散させない最良の方法です。

PCR結果が陽性!入院と退院

新型コロナウイルスのPCR検査を受けてから結果が出るまで、佐賀県の場合、1〜2日ほどかかります。

患者は結果が分かるまで、基本的には自宅待機が求められます。検査を受けた病院によっては、重症者向けの専用病室を用意してもらえる場合もあるかもしれません。

「陽性」という結果に備えて、できることは?

岩田先生

「入院が決まると、退院まで2週間程度はかかります」

「新型コロナ陽性患者は、面会謝絶。発症後は、PCR検査で2回陰性が確認されないと、退院できません」

新型コロナ陽性でも軽症者・無症状者は「宿泊療養・自宅療養」が可能となりましたが、佐賀県では爆発的な感染拡大がまだ起こっていないため、基本は入院の措置がとられているようです(2020年5月1日現在)。

佐賀県の新型コロナ陽性患者が入院するのは、県の指定する感染症指定医療機関5ヶ所のうちのいずれかの病院。

厚生労働省によると、入院患者は発熱等の症状が治ってから、24時間後にPCR検査を実施(1回目)し、陰性が確認されたら、2回目の検体採取後24時間後に再度PCR検査を行い(2回目)、2回連続で陰性が確認されたら、退院が可能とのこと。

PCR検査を受けることになったら、結果が出るまでに「2週間を想定した入院準備」をしておきましょう。PCR陽性による入院や治療にかかる費用は、すべて無料。完治までの医療費に、自己負担金は発生しません。

また患者は、退院してからも、しばらくは自宅待機と経過観察が求められます。国内でも症状再発が確認されるケースが報告されており、本人の外出が制限されるため、周囲の理解とサポートが欠かせません。

入院前に、退院後の生活についても、身近な人と話し合っておいた方が良さそうです。

地域の医療を守るために

2020年5月現在、新型コロナウイルスの流行地域で医療現場の苦境を伝える報道を目にすることも、増えてきました。

感染爆発が起きていない佐賀県東部で地域医療を守るために、今、私たちにできることは何だろう?

大字基山編集部による新型コロナウイルス感染症「地域医療の現場から」シリーズ、最終回のテーマは「医療崩壊を防ぐために今、私たちにできること」です。

 

取材・文章:江藤裕子

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