2021年夏、基山町の公立小学校・中学校の「夏休みの友」つまり夏休みの宿題ドリルが、「タブレットドリル」になっています。
この春から町内の全校生徒に行き渡っていた、1人1台のタブレット。その本格的な「自宅での活用」が、夏休みの宿題という形で始まりました。
コロナ禍をきっかけに、全国で急速に進んでいる教育現場でのタブレット普及。文部科学省は「GIGAスクール構想」を掲げており、「令和時代のスタンダードな学校像として、全国一律のICT環境整備が急務」「すべての子ども1人1人に最もふさわしい教育を」としています。
鉛筆で書き込んできた「紙」の宿題から、タッチパネルやキーボードで入力する「タブレット」の宿題への進化。これまではドリルタイプの宿題が1人1冊配布されてきましたが、今年の夏休みの宿題は、インターネット環境下で指定のサイトにアクセス・ログインして、担任の先生から出される問題集と向き合っています。
「タブレットドリル」は、教科書の出版社である東京書籍が提供しているもの。
オンラインで出題・回答し、また答え合わせはドリル内で自動完結するので、保護者や教員による「丸つけ」は必要ありません。子どもたちの宿題の進捗状況も、リアルタイムで担任の先生が把握しています。
さらに、夏休み期間中の「登校日」も、オンライン化。Googleの教育現場向けサービス「Classroom」を活用し、先生とクラスメイトたちとオンラインミーティング形式で、指定の日時に顔を合わせます(今年は夏休み期間中に2回)。
中学生は、毎朝8時までにログインして健康観察を記録したり、家庭科や理科などの課題や自由研究の作成・提出にもタブレットを活用しているんだとか。
このように、すべてがオンライン上にあるので、インターネット環境とアカウント情報さえあれば学校で配布されているタブレットに限らず自宅のパソコンやタブレットを使って取り組むことも、できるそう。
なお、自宅にインターネット環境がない家庭には、学校から上限5Gまで使えるWi-Fi ルーターが支給されます。子どもたちが夏休みの宿題に取り組む分には間に合いますが、その使用状況は学校側は把握。万が一YouTubeやゲームなど目的以外のことに使うと、「なくなります」。
保護者世代のみならず、教育関係者にとってもこれまでにない初めての試みであり、まだまだ慣れず、さまざまな課題もありそうな「タブレット学習」。
夏休みの自宅でのタブレット学習が決定した当初から、各家庭の教育方針や「万が一自宅で壊してしまった時の実費負担」「子どもによる持ち運びのリスク」「我が子の理解度・進捗が分かりにくい」といった懸念があり、町内の保護者の間でも賛否両論があります。
「賛否両論は大前提。まずはやってみる。そしていろんな声を聞きながら、改善しながら慣れていく」と今回の取材に応じた、基山町教育学習課。今年の夏休みは、初めての対応に試行錯誤するため、教職員の負担も多少はあるだろうとのこと。しかし、夏休み明け、職員室の「机の上に山積みの宿題たち」はなくなる見込みです。
これまでに例えば、各教室に導入された「電子黒板」も、当たり前に授業に使われるようになるまで5年、授業に「なくてはならない」備品になったのはここ2年ほどのこと…というエピソードも。
まずは大人も子どもも、新しいツールに慣れること。それが教職員、子どもたち、保護者にとって「当たり前」になるよう、教育現場は進化し続けています。すでに中学生の中には、支給されたログインアカウントを使いこなし、日常的にテスト勉強に活用している生徒もいるんだとか。
国が発表している各種資料によると、2024年度には、デジタル教科書も本格化することになりそうです。