基山町には個性豊かな保育園・幼稚園が合わせて6園あります。
大字基山では未就園児たちの新年度入所・入園に向けて、町内の6園全てに潜入取材する特集企画を敢行中。その第一弾は、インターネット上に公式情報がほとんどない私立の見真学園「見真幼稚園」で、さっそく卒園児たちが町中で先生方に「大字基山見たよ!」と声をかけてくださっているとか。
そして第二弾。今回は基山町内唯一の公立保育園である基山保育園にご協力いただきました。
開園から今年で62年目と、基山町出身者の多くがお世話になってきたと思われる、この基山保育園。2020年度に向けて園舎建て替えといった話題も出ている中、2017年度の今の園の様子をしっかり写真に納め、先生方にもお話をうかがってきました。
※プライバシー・セキュリティ面への配慮から、園内施設の一部のみをご紹介しています。より詳しい情報は幼稚園まで直接お問い合わせ・ご確認ください。
まずは写真で、保育園の普段の様子からご覧ください。
こちらが正面玄関。訪問時にはグラウンドを抜けて、園舎に向かいます。
実は正面玄関の前を横切る形で、小川が流れています。この小川は親水広場として、佐賀県の河川管理の一環で整備されているとのこと。水遊びの季節は、ここで園児たちが遊ぶこともあるそうです。水が澄んでる!
正面玄関、親水広場の手前に駐車場があります。周りには田んぼと住宅街があって、のどかです。ちなみに駐車場横の田んぼは、基山小学校の学習田だそう。
広々としたグラウンド。その周囲をぐるりと囲むように、砂場や滑り台、ブランコといった遊具が配置されていました。木陰もあるので、日差しの強い日には子どもたちも一休みできそうです。
グラウンドから見た園舎正面。鉄骨造の2階建てで、その規模の大きさが伝わりますね。園舎は大まかに2つの棟に分けられます。改築を繰り返して今の園舎になったそうですが、施工は昭和50年、つまり築42年!この園舎について2020年度に向けた建て替えの計画が進行中で、同時に公立保育園として運営の方向性についても2017年現在、町内で議論が交わされているところです。
2つの棟は1本の廊下で繋がっています。園舎を入ってから各教室へと続く廊下なので、しっかり雨を避けることができます。天井はパイプ類がむき出しになっていて、これはこれでワクワクしてしまう子どもがいそう。
保育園でよく見るこれ!廊下に何台も並んでいました。園内が広いので、小さな子どもたちの移動に使われています。月に1回あるという避難訓練の時にも大活躍。
子どもたちの毎日の離乳食や昼食は、園内の一角にある給食室ですべて手作りで提供されています。材料は基山町商工会を通して、町内の業者から仕入れをしているとのこと。アレルギーに関しては入園面接で聞き取りをし、その子に合わせた除去食で対応しているそうです。また月に1度程度ですが、お弁当の日も設けられています。3歳以上は副食(おかず)給食となるので、家庭からご飯を持参することになるそうです。
まだまだ暑い季節に取材したので、子どもたちがプールで遊んでました。園舎と園舎の間に設置されているので、なんと日よけが掛けられているという配慮!
中庭には、小規模ですが野菜畑がいくつかありました。先生方と子どもたちでお世話をしたり、地元の老人クラブ連合会との交流の場にもなっているようです。
よく見ると…スイカ!他にもオクラやナス、キュウリなども栽培しているそう。ちなみに老人クラブ連合会はプランターのお花を差し入れてくれたり、竹とんぼなどの昔遊びを教えてくれたりと、年に3回ほど子どもたちとのふれあい交流会が開かれているとのこと。
裏庭にもずらりと遊具が。グラウンドの遊具と合わせると、かなりの数と種類です。
同じ裏庭に、ブランコが2台も!実は基山保育園は入所定員数が250名と、佐賀県内でも有数の規模を誇る”マンモス”保育園。子どもの数が多いので、必然的に遊具の数も多め、というわけです。住宅街がすぐそばにありますが、歴史ある保育園だけあってご近所との関係も良好のよう。
こちらは園舎1階の年長さんの教室。廊下側だけでなく、中庭、裏庭にすぐに出て行ける作りになっていました。
0歳児、1歳児の部屋も見せていただきましたが、年長さんの教室と比べて遜色ない広さでした。
洋式トイレと男の子向けのトイレが完備されています。洋式トイレの扉がオレンジと黄色で、なんだかレトロで可愛らしい雰囲気。園舎の歴史を改めて感じますね!
園児の1日のスケジュールはこんな感じ。園を出て、ご近所にお散歩に出かける日もあるようです。
盛りだくさんの年間行事!特に年長さんが、積極的に園外イベントに参加している様子がうかがえます。地元基山町民とのふれあい交流会が年間通じて行われているので、子どもたちにとっても、良い刺激になりそうですね。
こちらは平成29年度の資料。重要事項説明書(園のしおり)として、およそ17ページにわたって細かく園の情報がまとめられています。
しおりから一部抜粋。利用料金は公立の認可保育園なので基山町が定めている通り、各ご家庭によって変わってくるので省略されていますが、延長保育の料金やその他諸経費については明記されています。
また準備品も各年齢ごとに一覧表になっていました。3歳児以上に指定されている制服、体操服、カバンは「ヒラノスポーツ店」で購入できるそうです。
2017年現在の基山保育園についてさらに詳しく、園長の髙木久幸先生と主任の藤田真由美先生にお話をうかがってきました。
——最初に園の資料に目を通したとき、年間行事が充実しているなぁという印象を受けました。
「特に年長さんがいろんな体験をしますね。例えば年に2、3回、食育の観点から食生活改善推進協議会の方によるクッキング教室があったり。月に1回ほど子ども向けにアレンジした茶道や、習字の時間もあります。例えばひな祭りには子どもたちの祖父母だけでなく、地元の老人クラブの方にもご参加いただいたりして、茶道の日頃の成果を披露しています」(髙木)
「基山総合公園で、駅伝大会もしてるんですよ。年長さんが800メートルを1人で走るのですが、早い子は3分台!もちろん大会に向けた練習もしっかりしています」(藤田)
——公立保育園だからか、地元の方との交流が多そうですね!
「それはあると思います。1年を通じて老人クラブの方との交流だけでなく、消防団のイベントに参加したり、老人福祉施設を訪問したり…今日(取材日)は中学校の職業体験を受け入れたりしています」(髙木)
——ミルクに関してはどういった対応をされていますか?
「ご自宅で使われているミルクの種類と同じものを園でも使います。アレルギー対応ミルクについても、もちろん大丈夫です」(髙木)
——子どもたちと接するときに気をつけていることってありますか?
「まず、子どもたちを呼び捨てにしない。長く一緒に過ごして仲良くなると、ついついやりがちなんですが、そこは気をつけようねと。それから子どもたちについて、その子の1日の様子やちょっとした怪我についても、職員の間でなるべく共有するようにしています。子どもの気持ちに寄り添う、話を聞く姿勢を大切にしたいと思っています」(藤田)
「特に先生たちに服装の決まりは設けていません。カジュアルで動きやすい服装にはなると思いますが…でもジャージでの登園はやめて、と言っています(笑)通勤服から園での服装に着替えるように、と」(藤田)
——公立の保育園ならではの強みって何でしょう?
「先生たちは、ベテランが多い!子どもを産んでから、職場に戻ってくる先生が多いんです。そして自分の子育てで気づいたことを園で生かしてくれるから、親目線になって子どもや保護者と接することができてるんじゃないかな。先生たちの保育士経験歴は平均10年くらい、最低でも5年といったところでしょうか」(藤田)
「先生たちの自主研修にも積極的に取り組んでいます。保護者の方は何でも気軽に、先生に相談してもらえると嬉しいですね」(髙木)
——保護者会の活動についても教えてください。
「毎年3月末の進級説明会のタイミングで、翌年の役員を決めています。夏祭りや運動会のお手伝い、園内の行事にご協力いただくことになりますが、それも年に3回くらいでしょうか。例えば節分の豆まきの時のオニ役(!)だったり、本来なら保護者が参加しない園のイベントに参加できちゃいます」(藤田)
「保育園にお子さんを預けている以上、保護者は皆さんお忙しいわけですから。何かイベントに向けて準備をしっかりお願いする、といったことはないですね」(髙木)
基山保育園のインターネット上の情報は、公式には基山町役場ホームページにあるのみ。役場ホームページでは定期的に、「園だより」などが公開されていますので、普段の園児たちの生活に興味のある方はぜひチェックしてみてくださいね。
基山町の保育園といえば公立の基山保育園と言われているだけあって、開園は昭和30年と、町内でもっとも歴史ある保育園です。
開園から62年間も地元関係者に支えられ、交流してきた実績と経験。ベテラン保育士である先生方に育まれる環境。マンモス保育園として園児の数は多いですが、より大きな地域という存在に見守られている園という印象を受けました。役場の方のコメントにもあったように、普段から大人数かつさまざまな関係者と交流しているからこそ、卒園児たちは小学校進学時の環境に馴染みやすいと言われるのかもしれません。
なお、基山町では2020年度に向けた基山保育園の園舎建て替えや運営の方向性について、まさに今、議論が重ねられている最中です。特に今月10月には基山町保育所整備基本構想(案)が公開され、この構想案に対するパブリックコメントの受付が10月16日から始まります(同31日締め切り、意見を出したい方はお早めに!)。
歴史ある基山町を代表する園だからこそ、次世代へどのような形でバトンタッチされるのか。
大字基山では、その行く末もしっかり見守っていきたいと思います!
施設・人物撮影協力:宮本薫