基山町には個性豊かな保育園・幼稚園が合わせて6園あります。
大字基山では、町内の6園すべてに潜入取材する特集企画を敢行中です。
※ころころ保育園レポート記事は編集部判断により2018年現在、一時非公開となっています。
シリーズ最終回となる今回は、基山町の小規模保育施設であり、認可外保育園の「ちびはる保育園」。
2018年2月には、佐賀県の県民だよりの表紙と巻頭特集を飾るなど、県全域…いや全国的な注目を集める園でもあります。
数多くの新聞やテレビでも取り上げられる理由はズバリ、全国的にも珍しい「商店街の中にある」保育園だから。大字基山では、基山モール商店街の一角にある園の普段の様子を撮影、「商店街の中にある」だけじゃない園の特長も、うかがってきました。
※プライバシー・セキュリティ面への配慮から、園内施設の一部のみをご紹介しています。より詳しい情報は幼稚園まで直接お問い合わせ・ご確認ください。
まずは、保育園の普段の様子からご覧ください。
基山モール商店街の並びの真ん中にある、ちびはる保育園。もともと町内の別の場所で開園していましたが、小規模保育施設への移行を考える過程で、基山町がモール商店街の空き店舗を移転先として紹介、2016年に現在地に引っ越して来ました。
保護者向けの駐車場は、園の周辺にある駐車場をいくつか借りているそう。保護者による送迎は商店街裏手の入り口で行われていますが、週に1回は商店街の表玄関を利用して、近隣との交流もはかられています。
商店街にある保育園ということで、「園庭」はありません。しかし商店街の歩行者天国「グリーンロード」の一部が、子どもたちの遊ぶ場所として利用されています。園から歩いてすぐの公園で遊んだりすることもあるようです。
ちびはる保育園の子どもたちは園の周辺で遊ぶ以外に、保育の一環で定期的に行われている運動教室やサッカー教室で体を動かすことも!その様子もちょっとだけ、お届けします。
運動教室は週に1度、原田公民館で開かれていて、整骨院でありパーソナルトレーニングジムでもあるアイズ基山駅前院のスタッフが子どもたちへの指導を行なっているんだとか。広い空間を使ってストレッチやほふく前進、マット運動までしっかり身体を動かします。
園ではサッカーにも熱心に取り組まれていて、月に一回は近郊のグラウンドを使ってサッカー教室も。専任コーチの指導の元、男女混合でボールに親しんでいます。子ども向けのサッカー大会に、チームとして出場することもあるんだそうですよ!
ちびはる保育園では、給食はすべてお取り寄せ。
小規模保育事業として0〜2歳児クラスは、連携保育施設である基山保育園の給食室で手作りされている給食が、毎日届きます。つまり、日々のメニューは基山保育園の給食と同じ!
そして3歳児クラス以上の子どもたちは、毎朝登園時に、その日のお昼ご飯が家から持参したお弁当なのか給食なのか、選ぶことができます。そして午前中、幼児用お弁当を作っている仕出し屋フレッシュランチ39に、希望する人数分を注文する…ということだそう。
子どもたちの気分転換に、そして家計の節約に、柔軟な選択肢があるのは嬉しいですね!
園内は、大きく2つのエリアに分けられています。小規模保育事業のエリアと、認可外保育園のエリアです。
子どもたちは年齢によってそれぞれのエリアで普段過ごしますが、時にはパーティションを開け放って縦割り保育のような時間もあるそうです。
子どもたちのトイレは、教室の真ん中付近に1つ。自動センサー付きライトで、子ども1人でも出入りしやすい場所となっています。
園の資料に掲載されている1日のスケジュール。平日19時以降は延長保育で、20時まで。なんと、原田園は日曜日・祝日も開園しているそう!また、園で子どもが発熱した場合は病児保育も有料で対応してもらえるので、もしもの時には心強いサービスになりそうです。
親子のさまざまなケースに臨機応変に対応できるよう、園の体制が整えられている印象。
年間行事もたっぷり。毎月の誕生会や、秋には電車や新幹線、船に乗るというお出かけ行事もあるようです。そしてマラソン大会が春と秋に2回もある!前期は男女混合で、後期は男女別に、原田園と合同で年齢別に行われるとのこと。
保育園のパンフレットと、年齢別にしおりも用意されています。また参考資料として、園に通う子どもたちの保護者の声が、1つの冊子にまとめられていました。「ちびはる愛」に溢れたメッセージばかりで、保護者と園の絆の強さを感じます。
2018年現在の園についてさらに詳しく、園長の杉原伸介先生にお話をうかがってきました。
——ちびはる保育園といえば、商店街のグリーンロードで元気いっぱい遊ぶ園児たちの姿が多く報道されて、有名になりましたね!
基山町の隣町…福岡県筑紫野市に、原田園を開園してから18年になります。その数年後、自分たちの保育方針に手応えを感じて、基山園をオープンしました。それが15年ほど前です。そして小規模保育事業の指定を受けようかどうか迷っているタイミングで、基山町のこども課や現町長、そしてモール商店街にも相談に乗っていただき、2年前、現在地に引っ越してきました。アクセスの良い場所ですし、地元の多くの方に喜んでいただけて、本当に幸せなことだと思っています。
——今日は商店街関連の報道ではクローズアップされにくい、普段の園の方針についてじっくりお話を聞かせてください。
ちびはる保育園では何より、お子さんを園に預ける、保護者の方にしっかり寄り添うことを大切にしています。子どもって、ご両親にとっては自分の命より大切なもの、ですよね?そんな子どもを皆さん、日中の大半を他人に…私たちに預けてくださっているんです。
だから園に子どもを預ける時に後ろ髪引かれるのは当たり前だし、時として悩み、理不尽になったり冷静さを欠くのも「親心」だし愛情があるからこそ。真面目な方ほど、子育てに悩みます。保育園たるもの、子どもがすくすく育つ場なだけでなく、親に寄り添って、その気持ちを否定してはいけないと職員にはいつも話しています。
——保護者とのコミュニケーションを大切にされているんですね。
僕自身、保育園を始める前はサラリーマンをしながら、自分の子どもを幼稚園に送迎したりしていました。すると例えば子どもがその日何をしたか分からなかったり、気になることがあっても園に聞いていいのかな?と遠慮しちゃったり、するんですよね。そしてそのまま子どもたちは卒園した…という体験があって。
そこで、ちびはる保育園では日頃の連絡帳を写真入りにしたり、絵などの制作物をまとめたものとアルバムを一緒にする工夫をしています。お迎え時にはホワイトボードにその日の写真をまとめたり…普段から子どもたちの様子をわかりやすく「伝える」ことを心がけています。
——子どもたちはどんな子に育って欲しいと思われていますか?
打たれ強い子、ですね。保育園を卒園してから大人になるまで、これからの人生、心傷つくことはたくさんあります。「学校に行きたくない」が親にとって、子どもにとって一番辛いこと。真面目なお利口さんではなくて…友達とたくさんケンカをしてもいいんですよ。ケンカで物事の解決を学びますし、調子にのって先生からガツンと怒られることも大事だと思っています。
——なるほど、褒めて伸ばすだけでなく、ですね。
大人の世界…社会は、理不尽ですよね。大人になっても褒められ続ける訳ではない(笑)。もちろん子どもを褒めることは大切なんだけど、褒める場面をちゃんと見つけるようにしています。そして同時に…例えば一方的に面白がってお友達を「イジる」場面を見つけたら注意することも、保育者の責任と考えています。ダメよ、ではなくなぜダメなのか子どもが考えられるように。真剣に魂を込めて注意するのは大人もエネルギーを使いますが、子どもにはちゃんと伝わりますよ。保育園の先生だからこそ、できることだと思っています。
——原田園とは、どのような連携の仕方をしているのでしょう?交流はありますか?
原田園と園児の数を合わせると、およそ100名ほどになります。園の年間行事は、ほとんどを合同で行なっていますね。例えば年に2回のマラソン大会や、運動会。運動会は3つのブロックに分かれて、勝敗をしっかりつける方針で行なっています。そういう意味では仲間であり、ライバルでもある…勝敗を決めるイベントごとは盛り上がりますよ!
——基山園に園庭はありませんが、身体を動かすカリキュラムが多い印象を受けました。
そうですね、希望者は小郡スイミングスクールに週一で通うこともできます。あとは、縄跳び!これには本当に力を入れていて、園オリジナルの大技を発表会や運動会で披露しています。もちろん運動だけでなく、毛筆硬筆の習字の時間もありますし、希望者には外国人教師による英会話教室もありますよ。
——ちなみに、その、縄跳びの大技とは…?
大技は、複数人でフープ跳びや縄跳び、2人跳びをしながら大縄を飛んだりする、複雑な技ですね。たくさん練習するので、年長さんで二重跳びができる子もいますよ。縄跳びはできた、できない、がはっきりするのが良いと思っていて…最初はできなくても、練習を続けると「できた!」という達成感を味わえます。努力の大切さだとか諦めない気持ち、成功体験を子どもたちに知って欲しいんです。
——最後に、保護者会について教えてください。
ちびはる保育園に、保護者会は、ありません。
——保護者会が、ない!まったく?
はい。僕が保護者として園に子どもを預けていた時、イヤでしたから(笑)
基山モール商店街に引っ越してきてから、全国的に知る人ぞ知る保育園となった、ちびはる保育園。しかし近郊の保護者にとって気になるのは、その園に通う子どもたちの日常や保育方針!
なかなか報道でそこまで触れられる機会もないそうで、今回の大字基山の取材はある意味で”特別感”のない、園の普段の姿に迫る記事になったのではないかなと思います。
もともとサラリーマンをしていた園長先生が、自身の子育て経験を元に、親目線で保育園はどうあるべきか考えて形にしたと語る、ちびはる保育園。注目されがちな商店街の中の園というだけでない、保護者に寄り添う園としての魅力を再発見することができました。
施設・人物撮影協力:LINUS 宮本薫