2021年4月から、基山町にある小学校の1つ、けやき台にある若基小学校が「小規模特認校」となることが決定。PR用の映像が、基山町YouTubeで公開されています。
2020年10月と11月に行われた、町民向けの説明会で関係者から詳しい話を聞いてきました。
若基小学校の、何が変わるのか、変わらないのか。気になるポイントと特色を整理してみます。
「小規模特認校」制度は、これまでの校区割は原則として維持しながらも、保護者および児童の希望により、別の通学区域からの就学を認めること。
現在、若基小学校に通う子どもたちは、基山町の6区、12区、13区、14区、15区、16区、17区に住まいがあることが条件。つまり、これが「校区」です。
若基小学校が小規模特認校になるということは、この校区の決まりは変わらないものの、その他の地域…つまり、基山小学校の校区に住む子どもたちが、若基小学校に通うことができるようになります。
町内1区、2区、3区、4区、5区、7区、8区、9区、10区、11区に住む小学生であれば、2021年以降は、通える公立小学校の選択肢が増えることに。ただし、希望して入学した若基小学校から基山小学校への転校は、原則、認められません。
基山町にある2つの小学校の事情が、「小規模特認校」制度導入の背景にあります。
基山小学校は子どもの数が増え、毎年のように特別教室を通常の教室へと改築するなどの対応が進んでいます。
一方の若基小学校は、ほとんどの学年が、1クラス。過去には約940名の子どもたちが通っていたこともある大きな校舎と教室数に対して、現在は約230名の児童数です。しかし、1クラスは35名ほどと、基山小学校とほとんど変わりません。教室は、余っています。
そこで、「小規模特認校」となることで目指すのが、若基小学校に通う児童の数を増やし、各学年を2クラスに増やすこと。
現在の法律では、公立小学校の1クラスの児童数は最大40名(1,2年生は35名)まで。学年の児童数が41名以上(1,2年生は36名以上)となって初めて、もう1つクラスを増やすことが可能になるんだそう。
若基小学校の場合、2020年11月時点で各学年10名ほどが増えると、1クラス20名ほどの少人数教育が可能なクラス分けができる見込みです。たとえ10名以下でも、数名でも転入生がいれば、クラス担任以外の先生方の配置転換などでクラスを増やすことも、できる可能性が。
町が取り組もうとしているのは、若基小学校の魅力の一つに「少人数教育」を加えよう、という試みなのです。
基山小学校も、若基小学校も、卒業生の多くは地元の公立中学校である基山中学校に進学します。そのため、町の教育委員会では「小中一貫教育」を基本的な考え方として、3校で連携を取りながら、教育方針や教育プログラムを組んでいます。
そして、若基小学校は「小規模特認校」になっても、教育方針やプログラムは、基山小学校と差別化する予定はありません。
これまでと教育内容が変わることはありませんが、「小規模特認校」若基小学校ならではの特色をまとめてみました。
若基小学校の子どもたちは、これまでは1年生から6年生で卒業するまで、ほとんどの学年が1クラス。つまり、同級生はみな顔見知りで、上級生・下級生との関係も近く、掃除や学内交流が日常的に「縦割り」で行われています。「若基小学校の子どもたちは、本当に仲が良い」という、先生方。
また、「2クラス制になると、クラス替えができるようになるんです!」という声も。これまではなかった、少人数でのクラス替えを経験しつつ、もともと校風としてある「アットホームな雰囲気」がさらに増すことでしょう。
2クラスになるとクラスメイトの数は半分になりますが、「授業に集中できる」「質問がしやすい」「学習能力や理解度を先生が把握しやすい」など、学力向上につながる変化も期待できそうです。
子どもの数が、少ない。それはつまり、一人一人のパーソナルスペースが広い、ということ。広い運動場や体育館、プールをいっぱいに使って、若基小学校の子どもたちは体を動かしています。三密を避ける新しい生活スタイルも、問題なし。
集中したい自習タイムや作業時には、2つの教室に分かれて活動するなど、雑音が少なく静かな環境も特徴的だそうです。
また、2020年度内にトイレの洋式化、フルリフォームを行うなど、設備も整いつつあります。基山小学校より古い校舎ですが、数年以内に大規模改修工事を行う計画も、検討されているんだとか。教室には、冷暖房も完備されています。
若基小学校の見た目に分かりやすい特色として、指定の制服があります。「服を選ばなくていい」メリットととらえるか、「好きな服を着れない」デメリットととらえるか…。各ご家庭によって、視点が変わりそうなポイントです。
制服を用意する必要があるため、転校する際には少なからず、初期費用がかかりそう。しかし、学内や保護者の間でお下がりの流通も、あるようです。例えば、「わかフェス」と呼ばれる学内イベントのバザーでは、制服のリサイクル活動が行われています。
関心のある方は、若基小学校に問い合わせてみると良いかもしれません。
町内どこからでも通える「小規模特認校」になるため、子どもたちの安全を第一に、「保護者による送迎」が可能となります。普段から車で通勤する保護者には、親子の時間が増える、新しいライフスタイルの提案となりそう。もちろん、徒歩による通学も、できます。
また、町内を循環する「コミュニティバス」の利用も、提案されていました。
例えば、基山駅を出発し、学校最寄りのバス停「けやき台入り口」に朝7時台に到着するバスは、現在、2本。子どもは1回50円の運賃がかかります。
町としても、今後、小学生がバスを日常的に使いやすくなるような計画を準備中だそうです。
今回の制度導入のポイントは、「若基小学校は小規模特認校になるが、生徒数が増えないと、1クラス20名弱にならない」ということ。制度に理解ある、町内保護者の協力が不可欠です。
少人数教育に関心のある保護者の方は、今後も予定されている基山町教育委員会による説明会に参加してみたり、直接問い合わせてみてください。基山町役場2階にある教育学習課に必要な申請書があるほか、個別の相談にも応じているそうです。
2021年4月に若基小学校の校区外からの入学・転入を希望される場合、12月24日までに申し込みが必要です。