2019年11月3日に基山町小倉で、地域の伝統行事「池干し」が行われました。
これまでは地元組合の方々のみで行っていた、この行事。今年は呼びかけに応じた近郊の子どもや大人約120名が集まり、一大イベントとなったのでその様子をレポートします。
この池干しの主催者は、地元の「池の坂組合」。基山町には農業用のため池が複数あり、今回の池もその一つだと言います。
昔は一年に一度、地域の恒例行事として行われてきた「池干し」。しかし近年は、地域の中で担い手が不足してきており、実施頻度も自然と減ってきていたそう。3年前に行った前回は、地元の方10数名で作業でした。
そこで、今年は基山町のころころ保育園に声をかけて人集めを行ったところ、あっという間に100名を超える参加者が集まり、途中で参加受付を締め切るまで注目を集めた限定イベントになりました。
しかし、なぜ池の水を全部抜く大作戦を決行するのか?そこにはいくつか理由がありました。
定期的にこの作業をしていないと、毎年どんどん土砂が池の底に堆積してしまい、池が浅くなったり、最悪その重みで堤防が決壊してしまうこともあるんだとか!池の周りの地域を予期せぬ水害から守る、大切な仕事でもあります。
田舎の人通りの少ない場所にある池には、時折り、心無い人がゴミを捨てていく悲しい現実。実際に、今回も大きな発砲スチロールが捨ててあったり、瓶や缶などのゴミが捨ててありました。それらを撤去するのも池干しの目的です。
基山町は海から遠い、山里。そのため、昔はこのあたりの地域では、海の魚がそうそう手に入らなかったそう。そこで伝統的に池で鯉やフナなどを飼育して、池干しの時に捕まえ、調理して食べていました。
今でも池干しの時には、大きくなった鯉やフナ、川エビなどをその場で調理して、みんなで食べます。
そんな昔ながらの暮らしと伝統を継承し続けている、この地域の習わし。子どもたちは勿論、大人も一生懸命、話を聞いて学んでいました。
大人が真っ先に池に飛び込めば、子どもも本気になって池干しの作業に参加し、遊びます。浅くなった池に飛び込み、大きな網で鯉を生け捕りにしたり、そこら中でピチピチ跳ねる川エビを獲ったり…。
土砂に足を取られる重労働ですが、なかなか体験できない池干しに、大人も子どもも夢中になって取り組みました。
鯉のお味噌汁「鯉こく」と獲れたて川エビの素揚げは、参加者をねぎらう、最高のご褒美です。
魚を獲って、池の清掃をして、池のほとりで美味しい出来立て料理を参加者全員で食べた、池干しイベント。
今回は、初めての試みということもあり、広く一般向けに参加者募集は行われませんでした。そのため、次回の開催について詳細は未定です。
ちなみに、基山町の他の池でも、池干しを行っている地区はあるんだそう。町内在住で気になる方は、ご近所の「池」事情を地元関係者に聞いてみましょう。毎年、10月下旬から11月上旬にかけてが池干しのシーズンとされています。
取材・文:原田光
撮影:ノビトワークス