佐賀県基山町発ローカルメディア〜おおあざきやま〜

【嘘か真か】基山町の子どもは洞窟に閉じ込められることがある

!編集部注!

本記事は、2020年4月1日の「エイプリルフール」企画です。普段の大字基山はとっても真面目で、ネタ元に事実確認するよう心がけていますが、今回の記事は”情報源不明”です。

どこまで本当?信じるか信じないかは、あなた次第です。

 

基山町では、長年に渡って、まことしやかに囁かれる「怪しい噂」がいくつもあるという。

その内のひとつが、「基山町の子どもはある年齢になると、山奥の洞窟に閉じ込められて一夜を明かす」という、現代社会ではにわかに信じがたい話。

保護者の間では定番の噂話だとか

中山間部の小さな田舎町とはいえ、電車も電気も水道も通っている場所。果たしてそんな前時代的な行事が今なお行われているのか…?はたまた、度を過ぎた家庭内での「しつけ」なのか…?

聞きようによっては恐ろしくも感じる、この話。

この春、大字基山編集部が意を決して、噂の出元と思われる基山の山奥に調査に出かけた一部始終をレポートする。

「洞窟」のある場所

情報提供者によって案内され、基山の「山奥」に分け入ったのは3月下旬。

本格的に調査を開始してからここに到るまでおよそ半年。やっと噂の現場を訪れることができる緊張感と高揚感を覚えながら、離合の難しい細い山道を黙々と運転する。山道に一歩入れば、人が暮らす気配は一切ない。

途中、巨鳥・エミューの穏やかな鳴き声が響くエリアを抜け、山道からさらに急な斜面を登ってたどり着いたのは、一軒の山寺だった。

ひと気のない山道を登っていく

到着した噂のお寺。本堂まで長い坂道が続く

木々に囲まれた静かな佇まいの本堂

「子どもが入る洞窟…あぁ、ありますよ」。

恐る恐る企画の趣旨を伝えて取材を申し込む編集部スタッフに対して、したり顔で出迎えてくれた、寺の住職。人懐っこい笑顔を浮かべ、洞窟の存在をあっさりと認めた。

「こちらです、足元に気をつけて」。

先導を受け、本堂裏の、敷地の奥へとさらに向かうことにする。

鬱蒼と木々が茂る裏道は、陽が差し込む日中に人の案内があってこそ落ち着いて歩くことができるだろうが、夜となれば間違いなく真っ暗闇。肝試しにもなろうというものだ。

本堂の裏手に向かう

日本庭園をずんずん進み、山奥へ

住職「昔は子どもを連れてこの石段を登ったものです」「マジか」

住職の不穏な発言に慄きながら、今風の階段を登る

経年によって表情の見えない石仏の数々

「洞窟って言うほど広くはないんですが…でも、この辺で子どもが入る洞窟といえば、ここのことじゃないかな」。

本堂から、くねくねと曲がりくねった散策道を歩くこと数分。我々は、とうとう目的の場所にたどり着いたらしい。

石仏が見下ろす位置に噂の洞窟、その入り口

山道の岩陰を覗き込むと、洞窟の四角い入り口がぽっかりと開いていた。

明らかに、大人は背を屈めなくては入れない大きさだ。

子どもと洞窟の関係

ニコニコと笑顔を絶やさない住職にここで、ストレートに質問をぶつけてみた。

——この洞窟に、子どもを閉じ込めているんですか?

表情の変化を見逃すまいとじっと見つめたが、無邪気な笑顔には、一片の変化や曇りもない。

「…閉じ込める、というより、僕も一緒に入りますね」

——!?

思わぬ返答に動揺したのは、編集部スタッフだった。

入り口に彫られた文字から、大正時代に整備されたようだ

住職の解説によると、噂になっている「洞窟に子どもを閉じ込める」は間違い。「洞窟のような暗闇に子どもと僧侶が閉じこもる」が正解に近い。閉じこもるのも、今ではお堂で行なっており、それも1時間ほどだという。

さらに詳しく聞き進めると、洞窟エピソードが誕生したのは、おそらく遡ること江戸時代。基山町周辺で密かに信仰されていた「隠れ念仏」にそのルーツがあるらしい。

隠れ念仏は民間信仰の「御座念仏(おざねんぶつ)」として、今でも基山町の一部エリアに根付いている。その門徒の一族の子どもが、小学校入学前、数えで7歳になる頃に行う「七五三のような行事」が噂の正体のようだ。

洞窟は大きな岩が天井になっていて、小さな空間

——しかし、七五三のような行事と言われても、なぜ暗闇で、洞窟で、行われる必要があるのか腑に落ちない。

「もともと隠れて信仰していたものですから…祈るのは、夜とか物陰に隠れて、だったんですよね。今でも祭事にはその伝統が残っているんです」。

「今は別のお堂を暗くして、行なっています。希望があれば洞窟でもやりますけど」。

——そもそも、中で何をやっているのか。

「もともとは、信仰する各家庭で行われていた行事だと思うんです。100年ほど前に宗派としてまとまってから、集落の風習として僧侶が担当するようになったのではないかと」。

小さな洞窟の中には祭壇がある

「中では、御座念仏の独特の秘技が行われます。基本的には、懺悔と感謝の場。自我が出てきた子どもたちに、問答を通して、『悪いことをしない』『感謝の気持ちを忘れない』というようなことを分かってもらう場ですね」。

——怖くて泣き出す子もいたりするのでは。

「泣く子はいないですね。おまじないのようなこともするので、物珍しくて好奇心の方が勝つのかも。ただしこの時、僧侶は笑顔を見せてはいけないという決まりがあるので、緊張感はあると思いますよ」。

嘘か真か?真相は知る人ぞ知る

今回の話をまとめると、噂の出所は、基山町内の集落の一部で続く子どもの成長を祝う伝統行事だった。地元の風習の一つとして、今でも年に数人のペースで、地元の子どもたちが参加しているらしい。

「基山町の他の集落でも、御座念仏の風習が残っているところは、地元のお寺で行事化しているはずです」と語った住職。

古来から伝わるという呪術的な秘技が行われる様子は、残念ながら関係者ではない以上、詳細をレポートすることは断念した。

民間信仰の場としての洞窟だった

——しかし、洞窟に子どもを閉じ込めて一晩放置…は流石にデマでしたね。

取材を一通り終えて住職にお礼を述べなから、春の陽気にふっと気が緩んだのか、本音が漏れてしまった。

「…僕や兄弟は、悪いことをしたら、まずは本堂。次に本堂の下。その次に洞窟。さらに悪い場合は、今はもう崩れてしまったんですが、奥の院のお堂に閉じ込められる…ってことが小さい頃は、ありましたよ」

——え。

「僕は、本堂の下まで。兄貴は奥の院まで連れて行かれてましたけどね!」

ちなみに、立派な大人に成長した住職が溺愛するお子さんたちは三姉妹。将来、お説教を受けて洞窟に閉じ込められる心配は、外野による無用なお世話である。

エイプリルフールだから、噂はあくまで噂

桜が見頃を迎えつつある山寺に、住職の太い笑い声が響いた。

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