佐賀県基山町発ローカルメディア〜おおあざきやま〜

【朝倉のいま】「かっぱの巣」高浪さんの九州北部豪雨の話

2017年7月5日。

九州北部で発生した集中豪雨により、福岡県朝倉市と東峰町、そして大分県日田市を中心に計40名の死者が出る甚大な被害が発生(行方不明者は2名)。その痛ましい爪痕は全国に向けて、連日のように報道されました。

なかでも、朝倉市は佐賀県基山町から車で片道40分ほど。

「朝倉三連水車」などがある身近な観光地として、日帰りでお出かけできる人気スポットです。被害が拡大した当日は基山町近郊でも大雨が続いており、朝倉地区を中心とする被害状況にショックを受けた町民も多かったのではないでしょうか。

それから1年。

私たちにとって行き慣れた観光地区の当時の様子、そして復興しつつある現在の様子を直接見聞きしたいと、2018年6月某日、現地へ取材に行ってきました。

今月の大字基山は、シリーズ「朝倉のいま」と題して、朝倉でお会いできた方々のお話と復興途中の様子を中心に、レポート記事をお届けしています。

前回は朝倉の観光スポットでもある、藤井養蜂場の被災当時の様子をお伝えしました。

私たちの取材先は、九州北部豪雨による被害のあった地域のほんの一例。今なお復旧復興の見通しが立たない場所があり、避難生活を続けていらっしゃる方も多くいます。

私たちの記事が、九州北部豪雨の記憶を忘れず、福岡・大分の地域一帯への支援が細くとも長く続く一助になれば幸いです。

うどんとそばのバイキングのお店「かっぱの巣」

シリーズ第2回目は、もう一軒、九州北部豪雨で被災された朝倉のお店をご紹介します。

うどんとそばのバイキングのお店「かっぱの巣」店長、高浪賢一さん(32歳)に、お話を伺うことができました。

当時は、隣接する和菓子店「あさくら堂」の工場長を務めていた高浪さん。その日はお店のすぐそばにある、工場にいました。

雨が降り続き、避難指示も出ていたため早めに仕事を切り上げ、従業員のみんなを帰そうとしていた時のこと。

気づけば、あっという間に水位が上がり、山からは濁流と、数々の流木が押し寄せてきていました。

「急いでスタッフみんなを連れて2階に上がりました」。そして、1階の様子が気になるからと様子を見に行った社長が、いつまでたっても一向に戻ってきません。

あさくら堂 被害 外観

当時のお店。まるで流木をせき止めているかのよう

「まさか…?信じたくない…」

勢いが止まらない濁流を前に、戻らない社長を思って、最悪の事態が高浪さんの頭をよぎったそうです。

諦めかけたその時!

かすかに人の声が聞こえる…!

階段下の踊り場近くに駆け寄り、水圧で重くなった扉をみんなで必死でこじ開けた!

するとそこには、胸まで水がどっぷり浸かった社長の姿が!

良かった!助かった!

踊り場下 かべ

水害跡が残る、工場の踊り場付近の壁

そしてこの時点ですでに、お店の目の前には流木や瓦礫の山ができていました。

その様子を目にして、工場内で不安な一夜を過ごしながら、高浪さんが考えたこと。

「工場もお店もこんな状態になってしまった…。とてもじゃないが、今後はもう営業ができないだろう」

想像もしていなかったあまりの被害の大きさに、申し訳ない気持ちでいっぱいになりながらも、翌日には当時の従業員全員を解雇する決断を下したそうです。

自分自身もこの先どうすれば…?

呆然と、途方に暮れていた矢先。

地元の方やボランティア、友人達といった大勢の方々が、連日連夜泥かき、瓦礫撤去といった作業を一生懸命手伝ってくれたのです。

その姿を見た高浪さんは…こんな大勢の方々が協力してくれている。待ってくれている方がいる。

必ずまた復活してみせる!と決意。

そして被災から、およそ3ヶ月後、お店の営業を再開。

営業を始めてからは、おかげさまでまた、たくさんのお客さんで賑わい、中には再開できて良かったねと泣きながらお店の中へ入ってこられた方もいらしたそうです。

入り口に立てかけてあるこちらの看板、被災後は行方不明になっていましたが…なんとはるばる長崎の海で発見され、戻ってきたのだとか!!

まるで、営業再開を予知していたかのような奇跡の出来事ですよね。

土砂は跡形もなくさっぱり!

被災前からの理念を受け継いで、今日も元気に営業中です!

ずらっと並ぶトッピング・お惣菜!

かっぱの巣の店内中央には、セルフサービスのお惣菜がこれでもかと並び、うどん・そばの付け合わせとして、バイキングのランチを楽しむことができます。

「お惣菜とトッピングは選び放題、食べ放題で、無料です!」

4歳以上の方は1人1枚、うどん・そばの食券(650円〜)を購入。バイキングで好きなトッピングを好きなだけ選んで、究極の1杯をオリジナルにカスタマイズできちゃいます!

復興を目指す菓子処「あさくら堂」

また、お隣の「あさくら堂」も営業はしています。高浪さんが一夜を明かしたお菓子工場は今もまだ稼働できていないため、地元の方が作った商品などを取り揃えており、これから徐々に品数を増やしていく予定だそうです。

店内には朝倉土産がずらり

今もまだ、工場は稼働できていないのです

元スタッフの気持ちが詰まった三連水車まんじゅう!

お店も工場も甚大な被害に遭い、絶望感に打ちひしがれ、一時は諦めかけた復興。

それでも一生懸命に力を貸してくれる、周りの方々の姿に心打たれからこそ、営業再開を成し遂げることができたんですね。応援の声はもちろんですが、被害を受けた本人たち以上に周りの「諦めない」行動が、復興の力になるのかもしれません。

今でも地元から愛されている、復興の道なかばのお店です。

場所ごあんない

福岡県朝倉市山田2184

営業時間・定休日

  • 営業時間: 11:00~15:30(15:30オーダーストップ)
  • 定休日:火曜日

お問い合わせ

関連リンク

 

次回の「朝倉のいま」は最終回。8月第4週に更新予定です。

by
大字基山編集部メンバー
大阪府出身。2児の母。
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