佐賀県基山町近郊で、2021年1月に入ってから住宅街で野生サルの目撃が相次いでいます。
鳥栖市や小郡市でも、同じくサルが出没中。連日の目撃に、各自治体で注意喚起が行われています。
本来は、群れで生活するニホンザル。
しかし、雄は、大きくなると違う群れに移る習性があるそう。住宅街に出没しているのは、この単独行動をする「ハナレザル」です。
サルが目撃されている地域の住民にできることは限られますが、とにかく身の安全を第一に、サルを刺激しないことが大切です。
近づかない
人に慣れていないため、近づくと危険です。目を合わせると、威嚇されたと勘違いして襲ってくる可能性があります。目が合わないように、その場を離れましょう。
刺激しない
大声を出したり、モノを投げたりして追い払おうとしても逆効果。防衛本能を刺激され、興奮したサルに襲われる可能性があります。
エサを絶対に与えない
サルが人に慣れると、地域に居着きます。周囲の人家に侵入するなど、地域全体に被害を引き起こす原因になるので、絶対にやめましょう。
エサとなるものを屋外に放置しない
畑や果樹園が多いエリアではなかなか難しい対策ですが、エサとなるものを屋外に放置しないよう、気をつけましょう。
戸締りを徹底する
屋根から二階の窓からも家に侵入することがあるので、戸締りは抜かりなく!
2021年3月現在、幸いなことに、怪我人などサルによる被害は報告されていません。
基山町内でサルを目撃したら、安全な場所に移動した後、役場の住民課・くらしの安心・安全係に通報しましょう。
通報を受けてから、担当課の職員や、地元の猟友会と連携して対応する産業振興課の職員が、現場に向かいます。これまでに何度か、野生のサルに遭遇したことがあるという職員に、詳しい話を聞きました。
——毎日のようにサルが町近郊で目撃されていますが、過去にも同じようなことは?
基山町の山間部エリアでは、年に1〜2回ほど目撃されています。しかし、今年のように連日必ず、住宅街のどこかで目撃されるケースは珍しいです。
通報があり次第、職員が現地に駆けつけるようにしていますが、いたちごっこになってしまい…。日によっては1日中、外でサルを追いかけている状況です。注意喚起の広報のため、青色回転灯をつけた車でパトロールもしています。
——サルが住宅街に出没するのは、季節的なものもあるんでしょうか?
山の実りは、確かに春先に少なくなりがちです。いずれは山に帰っていってくれると思うのですが。
ちなみに、サルは毎日夜には、ねぐらのある山に帰ってます。早朝、お腹をすかせて街に降りてきて、夕方にも食事をして、山に帰って寝ます。
——じゃあ、午前中は平地で目撃されがちで、夕方には山のほうに戻っていく…と。
昼間は、屋根の上で日向ぼっこしてるんじゃないかなぁ…なんて思いますね。
——サルは何頭、出没していますか?
最初は1頭だと思っていたんですが、今はアリバイ的に2頭いるのかなと考えています。
——アリバイ的に、2頭。
と言うのも、例えばサルの「大きい・小さい」の印象は、目撃された時のサルの体勢によって、変わるんです。座っていれば小さく見えるし、歩いていれば体が伸びて、大きく見える。
そして、サルの行動範囲は広い。山3つ分は軽く移動します。でも、ある日、同じ時間帯に町内の別エリアで目撃されたことがあって「これは2頭いるな」ということになりました。
——なるほど〜。
なので、鳥栖や小郡で目撃されているサルも同じ個体かもしれません。十分、あり得る話です。
——サル対策として、役場では具体的にどんなことをしているんでしょうか?
基本的には、サルに「山に帰ってもらう」ための対応です。「怖くて危ない場所」と分かれば、いなくなりますから。見つけたら、エアーガンや爆竹を使ったりして、驚かせたり怖がらせたりします。イノシシのような、駆除が目的ではありません。
あとは、ねぐらへの帰り道と思われる山間部に、箱罠を2つ仕掛けています。罠を仕掛けるには免許が必要なので、猟友会の有志の方に、設置や見回りをお願いしています。
学習能力の高い、野生のサル。最近では、国道3号線など車の多い大きな道を「堂々と渡っていた」という目撃情報が寄せられたり、カーテン越しに一般住宅の中を覗き込むサルの様子が撮影されるなど、住宅街に適応しつつある懸念も。
サルを追い払うには、サルが嫌がる環境を作ることが大切です。そのため、「いたちごっこ」になっても、毎日のように町役場や猟友会関係者がパトロールを続けています。地域住民が協力できることは、「身の安全を確保してから、目撃情報を通報すること」。
サルに好奇心で近寄ったり、追い払おうと威嚇することは、くれぐれもやめておきましょう。