基山町といえばエミュー。
エミューといえば、九州一円では基山町。
そのくらいの勢いで、基山町は町の取り組みとしてエミューを猛プッシュ中です。
2017年に放送された基山町移住定住促進キャンペーンのTVCMも、エミュー。
しかし町民でさえ、「なんでエミュー!?」と一度はツッコミたくなる、この唐突感。
けっして、町に元から生息していた鳥でないことは、そのインパクトある見た目からも明らかです(…いやまさか)。
大字基山のコンセプト上、このエミューに触れないわけにはいかない。
そもそもエミューって基山町のどこにいるの? 関係者じゃなくても会えるの??
そして、なんで基山町でエミューなんですか?とズバリ、町民の声なき声を代表して聞くのが大字基山の使命に違いない。
編集部メンバー有志とその家族で、いざエミュー!と気合いをいれ、エミューが生まれ育つ現場を取材してきました。
エミューが飼育されている場所は、基山町に2ヶ所あります。それぞれ株式会社基山ファームと日本エコシステム株式会社という企業が、管理しているそう。
今回うかがったのは、日本エコシステムが管理する飼育施設。2017年現在、そこでは250以上300羽に満たないほどのエミューが平和に暮らしているらしい。
基山パーキングエリアの高速バス利用者向け有料駐車場の脇を抜け、上り方面の関係者・お客様駐車場を通り過ぎる一本道をまっすぐ進みます。
門を通り抜けると、緑豊かな空間が目の前に。
一歩足を踏み入れれば、そこは基山町イチオシの、巨鳥エミューのための空間なのです。
今回は取材を申し込むなど事前に訪問を告知していたので、到着してすぐ挨拶もそこそこに、はいどうぞ、とケースいっぱいのキャベツの葉っぱが出てきました。
どうやら、エミューの餌やりを体験させていただけるらしい。
さぁ、大量のキャベツとともに、エミューの群れへ突入だ。
近くで見てみると、世界で2番目に大きな鳥の迫力は本物です。でも思ったほど怖くない。
鳴き声が、オスはグルルという喉を鳴らすような音、メスはトントンと軽快かつ優しい太鼓のような音。
どちらも落ち着いた響きで、見た目とのギャップがあるからでしょうか。
あと、目と目があっても、人間が獲物として狙われている感があまりないというか…食欲さえ落ち着いてしまえば、スッと立ち姿も静かです。
とても大人しくて、穏やか。
その食欲が落ち着いたところで、実際に触らせてもらえたりもします。
最初は緊張の面持ちだった子どもたちも、だんだん遠慮なく、さわさわぐいぐい、なで始めました。
さて、こちらのエミュー飼育研究所。
現場を管理されているのは、日本エコシステム株式会社業務部農事課の堀彰さん。肩書きはズバリ、飼育場長!
——単刀直入に聞きます。なぜ基山町でエミューを飼っているんでしょうか?
「もともと、この場所って栗畑だったんですよ。僕がエミューの飼育場に適した場所を探していて、ここを見つけた時は、いわゆる耕作放棄地でした」(堀さん)
耕作放棄地とは、農作物が1年以上作付けされず、農家が数年の内に作付けする予定が無いと回答した田畑、果樹園。 世界農林業センサスで定義づけられている。
「エミューは生命力が強くて、性格が穏やかな育てやすい鳥です。その肉は高蛋白・低カロリーで、豚肉の約4倍の鉄分を含むなど栄養たっぷりで食用になります。他にもヒトの皮脂に限りなく近い成分のオイルが美容商品に使われたり、卵の殻がエッグアートの材料になったり…とにかく、活用方法の可能性が無限なんです」(堀さん)
——耕作放棄地とエミュー。
「そんなエミューだからこそ、ほったらかしにされて土地が痩せていくだけの元・農地で飼育すれば、エミューが雑草を食べてくれて、その糞が土地を豊かにする。野生の鳥獣対策にもなって、育てているエミューが産業化すれば、土地の有効活用ができるわけです」(堀さん)
——な、なるほど。エミューって物珍しくて面白い、だけじゃないんだ…。
「基山町の本福寺近くの耕作放棄地でもエミューが育てられていますが(注:基山ファームのこと)、エミューによって肥えた畑を使ってキクイモ(イモ部分に健康食品の原料にもなる多糖類イヌリンを多く含む植物)を栽培し、新たな産業につなげようという動きも出てきています」(堀さん)
——この場所は元・栗畑。ということは、今後は栗も売り出されたりされるんでしょうか?
「ここでは現在、基本的にエミューの繁殖と飼育に力を注いでいます。どうも病気の栗の木も中にはあるようなので、すぐに商品化して販売、ということは今は考えていないですね」(堀さん)
——ところで、堀さんご自身はなぜエミューを育てることに?
「僕が勤めている会社、日本エコシステムは、節電機のレンタルが主な事業です。他にも太陽光パネルを取り扱ったり…省エネや環境に優しい取り組みを事業化していて、その中の一つがエミューの有効利用、産業化です。僕が、社内のエミュー飼育担当なんです(笑)」(堀さん)
基山町がエミュー事業を猛プッシュしている理由が見えてきた、今回の取材。
夏休み期間中の子どもたちと一緒に研究所にうかがいましたが、初めてのエミューとの触れ合いを大人も子どもも、楽しむことができました。
そして滞在中、エミューが子どもたちに意地悪したりちょっかいを出すなど、大人がひやりとする瞬間はほとんどなかったような。
——子どもたちも、至近距離のエミューに大興奮でした。エミューは本当に大人しいですね。
「もともと穏やかなエミューですが、実は性格別に、飼育スペースを分けています。大人しい子たちは繁殖用、ちょっと気性の荒い子たちはいずれ食用に…といったところです。ヒトとの触れ合いは繁殖用の子たちのスペースで行いますし、入口の門さえ開いていれば、いつでも遊びに来ていただいて大丈夫ですよ」(堀さん)
——え!予約なしで、いつうかがっても大丈夫ってことですか?
「はい、基本的に門が開いていれば必ずスタッフが1名はいるので…週末の土日だと、午前10時から12時の間は僕もいることが多いです。基山PAのスターバックスコーヒーに寄るついでにでも(笑)、いつでも遊びに来てください!」(堀さん)
※2018年7月追記:スタッフの滞在時間は、毎日変わります。担当者不在の場合は、受け入れをお断りしているので、ご注意ください。
事前に問い合わせてからの訪問が確実ではありますが、思い立ったらすぐにエミューに会いに行くことができるとは思ってもいませんでした!(門さえ開いていれば、ですが)
エミューとの触れ合いや餌やりも、飼育員さんたちのタイミングによっては思う存分、楽しめそうです。
もちろん動物なので危険がないとは言い切れませんが、保護者は子どもから目を離さず、エミューに優しく、刺激しないようにすれば、小さなお子さんでもすぐにエミューと仲良くなれると思います。エミューの背中に乗せてもらえるチャンスも、ありそうですよ。
緑豊かな元・栗畑の広い敷地、優しい飼育員さん、人懐っこい巨鳥エミュー。
場所さえ分かれば、敷居がとっても低い基山町のエミュー飼育研究所。
親子で遊びに行って楽しい、基山町の地域創生の現場でした!
基山パーキングエリア上り近く
※研究施設のため、タイミングによって来客対応をお断りする可能性があります。