基山町内唯一の公立中学校「基山中学校」。設立は昭和22年です。
創立以来、令和4年現在の50歳も着ていたという歴史ある制服ですが、とうとう令和5年4月から、新しい制服に切り替わることが発表されました。
新制服になるまでのいきさつと、時代の先端をゆく制服の全容を取材してきました。
みなさんも一度は耳にしたことがある「LGBTQ」。近年、性の多様性を認め合う社会的な動きが一般化しつつあります。
LGBTQとは、Lesbian(レズビアン、女性同性愛者)、Gay(ゲイ、男性同性愛者)、Bisexual(バイセクシュアル、両性愛者)、Transgender(トランスジェンダー、性自認が出生時に割り当てられた性別とは異なる人)、QueerやQuestioning(クイアやクエスチョニング)の頭文字をとった言葉で、性的マイノリティ(性的少数者)を表す総称のひとつとしても使われることがあります。
「NPO法人 東京レインボープライド」より
その流れを受けて、2020年(令和2年)、基山中学校では教職員の発案で「ジェンダーレスにも配慮した制服を」と検討が始まったのだそう。
2021年、PTAや保護者、生徒会を中心とした生徒有志、そして教職員を対象にアンケート等による聞き取り調査がスタート。同年12月には、複数業者によるコンペも実施されました。
業者からの資料やサンプル、汚れへの強さを紹介するケチャップを使った実演など、さまざまな提案を受けたそう。さらに検討を重ね、PTAも教職員も激論を交わしつつ、さまざまな想いの結晶である新制服が完成しました。
2022年秋、次年度入学予定の小学6年生対象の説明会で、初めてお披露目された新制服がこちら!
説明会でも質疑応答が大いに盛り上がったというのも納得な、今まで見慣れてきた「学ランとセーラー服」のイメージから、大変革です。
主な特徴を整理しました。
ジェンダーレスな制服として性差を感じさせず、多様な選択が可能なデザイン。
アイテムはリボン、ネクタイ(長さ2種)。ボトムはスラックス、スカート。男女とも、アイテムの組み合わせ方は自由です。ベスト、セーターもありますが、気温や体調によって各自の着用判断に任されます。組み合わせは全部で24パターンにもなります。
基山中学校のスクールカラーは「えんじ色」。
それをベースに、基山町の花「つつじ」と基山(きざん)をデザインに取り入れたワッペンとボタンが使用されています。
スーツタイプの制服ですが、家での洗濯が可能なウォッシャブル。白シャツはニットポロシャツで、アイロン不要だそう。
ジャケットは男女兼用。ボタン穴が両側にあり、前合わせを自由に変更することができるので、男女間でのおさがりを譲り合うこともできます。ノータックもしくはワンタックを選べるスラックスも、男女兼用です。
また、ジャケットもボトムもストレッチ性があるので、自転車などの通学時もラクチン。
ジャケットの袖と後ろ、一見、目立たない場所には、反射材がついています。暗い夜道も、車に気づいてもらいやすくなります。
白ポロシャツは透け防止があるから、暑い夏はシャツ1枚だけの着用でも、安心感があります。着丈は、ボトムに入れても出してもOKという絶妙な丈感。着こなしも自由なんだそう。
現在の基山中学校は、防犯上の理由で名札を使用しており、新制服には名前の刺しゅうは入りません。そこで、胸ポケットには名札で生地が傷つかないように、名札用のネームサスペンダーがあります。
名札をつけたまま胸ポケットにしまうこともでき、名札紛失も防止できそうです。
新制服に切り替わるにあたり、これまでの制服の規則がいくつか変更になるようです。
例えば靴や靴下の色、制服の移行期間の撤廃など。いくつもある選択肢の中から、季節やシーンに合わせて着こなしを自分で判断し、日々登校することになります。
こだわりがたくさん詰まった新しい制服について、2022年4月から基山中学校・校長に着任されたばかりの、髙木健先生にお話をうかがいました。
——基山中学校の印象はいかがですか?
「学習にも部活動にも集中して取り組める生徒たちだなと、驚いています。これは凄いことです。
これまで在籍していた先生方が作り上げてくれたものなのでしょうが、本当に基山中学校の校風は素晴らしいと感じています」
——新しい制服について、どう思われますか?
「これからは、周りからあれこれ価値観を押し付けられる時代ではないと考えています。生徒たちそれぞれが、自分で考えて行動していかなければなりません。
本校でも『自ら考え行動する生徒の育成』を目指しています。制服は公的な場で着るもの。
学校でも社会でも、外に向けての意識を持って、何を選んで着用するか、自分で考え決定し行動する習慣作りになるのではないでしょうか」
個性や自主性を認めつつ、そして家庭や教職員の指導にも配慮した、基山中学校の新・制服。
2023年4月からは、この制服を思い思いに着こなす中学生たちが、基山町の新しい景色を作っていってくれることでしょう。
なお、制服の注文は、町内の以下の2店舗にて取り扱っています。