話題の書籍「発酵文化人類学」の著者、小倉ヒラクさんの書籍出版イベントが9月3日(日)、「今人々が発酵に惹きつけられる訳」をテーマに、基山フューチャーセンターラボ「まちゼミ」主催で開かれました。
小倉ヒラクさん、その肩書きは発酵デザイナー。
それではまず、こちらの動画を見てみましょう。
はい。耳に残るキャッチーな音楽と目に楽しいアニメーション。
日本の食卓に欠かせない「糀(こうじ)」とはなんぞや?動画を見れば感覚的に、お分かりいただけるかと思います。
小倉ヒラクさんは、デザインを通して糀を始めとする「菌」や「発酵」について誰にでも分かりやすく、文化人類学や科学の知識に裏付けされた、その深い教養と見識を余すことなく伝えるデザイナー、です。
「見えない発酵菌たちのはたらきを、デザインを通して見えるようにする」ことを目指して、全国の醸造家たちと商品開発や絵本・アニメの制作、ワークショップを開催されているそう。
というか、誤解を恐れずに言ってしまえば、「発酵が大好きすぎて詳しすぎるデザイナー」。
そしてその新著が、「発酵文化人類学 微生物から見た社会のカタチ」(木楽舎)。
発売されてから、その視点の面白さで数多くのメディアで取り上げられた話題作です。
この印象的な表紙を見たことがある方、基山町にも多くいらっしゃるんじゃないでしょうか。
実は、お母様のルーツが佐賀県だという小倉ヒラクさん。
軽快な語り口で、発酵や菌への熱い想いが止まりません。
「僕のイベントは、質疑応答が盛り上がるんです!」と予告しつつ、イベント冒頭は発酵について文化人類学的なアプローチで基礎知識をおさらい。
その後、1時間以上にわたる怒涛の質疑応答タイムが始まりました。
1つの質問をきっかけに、およそ5分はかけて丁寧に、菌の世界、発酵の文化や歴史のあれやこれやを面白おかしく、時に真面目に語り尽くします。
質疑応答の一部をダイジェストでご紹介してみましょう。
——麹、糀、こうじと同じ「こうじ」でも表記が違う。使い分けは?
「テキトーです!!」(と言いつつ、漢字の意味からその由来を紐解く、歴史ミステリー小説のような回答いただきました)
——酒粕の美味しい食べ方は?
「実はパンも焼けるしお菓子も作れます!グラタンに使ってもいいし、串カツみたいに揚げて食べるのもね、美味しい」(へー!と聴衆)
——面白いと思う発酵食品は?
「例えば日本編は徳島の阿波晩茶。アジア編は、ミャンマーの酸っぱい茶葉を地中に3年眠らせて、半分溶けたようなものを調味料として使う料理。ヨーロッパ編は東欧のジュレック」(一部、悲鳴が上がる)
他にも…
「木曽の味噌玉がヤバい。地元のイノシシをこの味噌玉を使って煮込みにして食べると、ゴジラ対キングギドラのような味で…美味しかったです」(お、美味しいんだ…)
「汚めのね、ちゃんと掃除してないような酒蔵の酒が意外と奥深くて、ウ・マ・イ!」(マジか)
とまぁ、これはほんの一部。
ワールドワイドで奥深い発酵文化、小倉ヒラクさんについて知りたくなった貴方は、ぜひ書籍(アフィリエイトじゃないAmazonに飛びます)を手にとってみてください!
さて、このイベントにはTVにも出演するなど話題の、基山町にある私立東明館高校のバイオ愛好会メンバーも参加。
そんな彼女たちが培養した、基山町の桜とつつじ由来の酵母菌を使って焼いたパンが、イベント参加者に振舞われ、味の食べ比べをすることもできちゃいました!
レシピ開発と実際にパンを焼き上げたのは、今回の出版記念イベントを誘致した基山フューチャーセンターラボ。
パンを焼くためにラボ内のキッチンを改造したくらい、基山町由来の天然酵母を使った本気の取り組みです!
パンの味は…間違いなく、どちらも美味しい!ふわふわもっちり!甘い!ただ、味、というか風味の違いは分かります。
個人的には、桜由来の酵母を使ったパンに、ナッツ系の香ばしさを感じたのが印象的でした。桜の方がしっとりしていてきめ細やか、つつじはさっぱりしていた!という声も。
小倉ヒラクさん曰く、こういった野生由来の酵母菌は発酵食品であればなんでも作れてしまうマルチタイプのものが多いとのこと。
この日はパンの試食でしたが、いずれは日本酒だって味噌だって、開発できてしまうかも…?
今回のイベント参加をきっかけに、全国各地の発酵文化が担う地方活性化の役割にも、想いを馳せることができました。
小倉ヒラクさんによる発酵文化人類学と、東明館と基山フューチャーセンターラボによって基山町で新たに生まれようとしている発酵文化。
どちらも、今後の展開に期待しましょう!