西日本豪雨被害から1年、復旧しつつある基肄城水門エリアの様子

2019年7月。

西日本全域に大きな被害をもたらした西日本豪雨（平成30年7月豪雨）から、1年が経過しました。

基山町と周辺自治体、佐賀・福岡の防災関連リンクまとめ

https://ooaza.com/feature/post12576.html

近年、梅雨から夏の時期にかけて集中豪雨や台風による大きな被害が全国で相次いでいます。これまで、基山町やその近郊エリアも豪雨による土砂崩れや河川の氾濫などを経験し、その復旧は道半ばです。https://ooaza.com/topics/post7952.htmlhttps://ooaza.com/topics/post7990.htmlhttps://ooaza.com/topics/post8037.htmlこのような悪天候が引き起こす被害だけでなく、「今後30年で発生する確率70〜80%」と警鐘を鳴らされてる南海トラフ巨大地震の備えなど、日頃から防災意識は高く持っておきたいもの。 防災・危機管理eカレッジ（防災...

2018年7月6日17時すぎ、九州は佐賀県、福岡県、長崎県で大雨特別警報が発表。特に被害の大きかった広島、岡山をはじめ、最終的には過去最多となる計11府県で大雨特別警報が発表されました。

その結果、西日本を中心に多くの地域で河川が氾濫、土砂災害も発生し、死者数が200名を超える大災害となったのは記憶に新しいところです。

基山町の受けた被害

そんな中、佐賀県基山町きやまちょうも豪雨による被害を受けました。浸水した場所あり、被害を受けた寺院・田畑あり…そして住宅が全壊・半壊するほどの被害を受けたエリアが、山間部の丸林地区です。

基山町丸林地区の復旧ボランティア募集、7/9（月）福祉交流館前に集合

https://ooaza.com/topics/post7990.html

2018年7月9日22時追記：基山町のボランティア募集は7月10日までです。その後のボランティア募集の予定は、佐賀県民災害ボランティアセンターの最新トピックスをご確認ください。https://ooaza.com/topics/post8031.html基山町の避難所閉鎖と同時に、早くも町内被災地区の復旧ボランティアの呼びかけが。基山町及び社会福祉協議会では、このたびの大雨災害により被災した丸林地区の復旧のため、急な話ではありますが、「社会福祉協議会丸林ボランティア」を組織し、派遣することとしました。基山町ホームページより他地区でも被災されて...

この場所で土砂が流入した家は2件、自宅敷地内に土砂が押し寄せた家は10件と報告されています。その主な原因は、豪雨によって崩れた山肌から発生した土石流でした。

被災直後、崩れた山道

上流から押し流されてきた木々

基山山頂に向かう道は完全に寸断

ふもとの民家や田畑に土砂が流れ込みました

基肄城水門跡が受けた被害

丸林地区から基山きざん山頂に向かう山道の途中には、古代山城である基肄城きいじょうの出入り口の1つ、水門跡（南門跡）があります。古代から26ｍ程の石垣が残っており、水門は造られてから1350年以上が経つ最近まで、山の水を城外に流し続けてきました。

被災前、水門そばには地元の方がお祀りした神社も

夏はちょっとした水遊びもできる空間でした

石垣は2008年から解体・組み直しが行われ、2015年に保存修理事業が完了。当時の面影を伝える史跡の1つとして、地元民の憩いの場であり、観光地にもなっていました。

そして、2018年の豪雨被害直後の様子です。

整備されていた空間が跡形もなく

水門も枯れています

土石流によって、現地にあった神社は消失。史跡である石垣や水門に直接の被害はありませんでしたが、水路が土砂によってせき止められ、水門のせせらぎが失われました。

被災から1年、現地で進む復旧作業

実は、本記事でここまで掲載してきた豪雨前と直後の水門付近の写真提供をしてくださったのは、長野郁生さん。大分県のご出身で、基山町民歴は25年ほど。町内でよく聞く「ちょうの」さんではなく、「ながの」さんです。

ブライベートで取材対応いただきました

お仕事が土木関係ということで、豪雨被害を目の当たりにしてから公私に渡って水門エリアの復旧を見守り、関わってきた長野さん。2019年6月某日、一緒に現地で進む復旧活動の様子を取材してきました。

※2019年7月現在、水門までの道路は工事車両以外、通行止めです。一般人の徒歩での立ち入りもお勧めできませんので、ご注意ください。

2019年現在、通行止めは続いています

きれいに舗装された道路

その周辺に残る、土石流の爪痕

道路脇に大きな岩。安全に通行できない状況です

水門エリア入り口の様子

水門に繋がる水路も復旧していません

地面の穴は神社、鳥居の跡

破壊された神社が瓦礫となっていました

史跡そのものに被害はありません

ふもとの田畑の整備も続いています

復旧工事によって被災直後の凄惨さは薄らいでいるものの、水門エリアへ歩いていく道の途中、周囲は未整備な箇所が目につきました。上流から流れてきたと思われる大きな岩や木が無造作に転がっており、予断を許さない状況のようです。

完全復旧には数年かかります

史跡を管理する基山町教育学習課によると、水門エリアや水門から向かう基山山頂への道、周辺の史跡をめぐる登山道の完全復旧の目処はまだ見えないと言います。

基肄城跡の川が流れている渓谷部分のあちこちが崩れ落ちていて、特に被害が大きいのだそう。

基山町HPより。水門から山頂への登山道は現在通行止め

実は現在、佐賀県による土砂災害対策「治山ダム」を被害の大きかった基山中腹に造る大規模な工事計画が進んでおり、その進行状況と相談しながら、史跡周辺の復旧が行われることになります。

おそらく、完全復旧には少なくとも今後2, 3年はかかるのではないでしょうか。

ちなみに…水門の石垣をはじめ、その他の史跡群は大きな被害を受けていないんだそう。なにより「道」の復旧が待たれますね。

水門から山頂への道は今も工事中

行政による復旧作業以外に、地元の方による復旧への努力も続いています。

もともと水門近くには、基山の天然水を汲み取れる水場もありました。豪雨によって周辺一帯が流されてしまいましたが、地元の方によってその姿を取り戻しつつあります。

被災後の水場の様子

2019年6月、新しくなった水場です

なお、基山山頂へは基山草スキー場（瀧光徳寺方面）から向かうことができます。水門や水汲み場への道は災害復旧工事が続いており、また周囲の整備が行われておらず危険があるため、通行できません。山頂から水門へのアクセスもできませんので、登山の際にはご注意ください。

基山町と基山・基肄城跡の復旧活動はこれからも、まだまだ続きます。水門経由の登山道が開通すれば、きっとまた、この地に懐かしい憩いの空間が戻ってくるはず。地元民は、はやる気持ちを抑えて見守っていきたいですね。

基山町史跡に関するお問い合わせ先

• 基山町教育学習課 TEL：0942-92-7980

関連リンク

• 基山・基肄城への登山・登城について（基山町HP）
• 水門跡・南門跡（基肄城跡）（基山町HP）