令和元年9月29日、テレビやラジオでおなじみの長寿番組「NHKのど自慢」の生放送収録が、10年ぶりに基山町に帰ってきました。
日曜日午後0時15分から、テレビやラジオで楽しんだ方…はたまた、実際に会場で体感された方もいるに違いない、地元での生放送収録!
前日の予選会では、250組が参加。厳選なる審査の結果、選ばれし20組の予選通過者が本番にいどみました。
滅多にないこの機会を逃すことなく、編集部も会場入り!本番前後の貴重な会場の様子を中心にレポートします。
本番の舞台は、基山町民会館の大ホール。
この日、会場に集まってきた収録観覧者は、事前に往復ハガキで申し込み、抽選で座席獲得の権利を手に入れた人ばかり。当日受付にて、希望者は先着順で座席指定券に引き換えます。
会場は11時開場、11時半に開演。最初に、前説を担当する方が登壇しました。NHKの営業職員だそうで、慣れたトークで会場を和ませていきます。
まずは冒頭「一曲歌わせてもらっても良いですか?」と、サングラスをかけだし…「走るぅ!走るぅ!俺え達ぃぃ♪」爆風スランプのランナーをアカペラでワンフレーズ。そんな笑いの起きる掴みの歌マネから、ラグビーや8月の佐賀豪雨被害の話題など。
「NHKのど自慢は全国放送。佐賀は復興に向け、みんな明るく元気に頑張っているんだということをぜひアピールできれば」と、話していました。
そして、基山町の松田一也町長も舞台に登場。
2019年は、基山町政80周年。記念すべき年にのど自慢が基山町で開催される喜びと、他局の番組「キングオブコント」で地元出身のお笑いコンビ・どぶろっくが優勝したこと、基山町名物のエミューのことを熱く語りました。
その後、舞台監督による生放送番組ならではの注意事項の説明やチェックを経て、のど自慢の名物アナウンサー小田切千さんが登場。いよいよ本番に向けて、高まる緊張感!
「生放送ですが、客席にいる皆さんは緊張しなくて良いんですよ。緊張するのは出場者の方々ですからね!」
本番直前まで軽快な、おなじみの千さん節に笑顔がこぼれます。
そして迎える、本番30秒前!
20秒前、、、
10秒前!
5
4
3
2
…
カ〜ンカ〜ンカ〜ン、カ・カ・カ・カ・カ・カ〜ン♪
あの有名なオープニングの鐘の音でスタート!いよいよ始まる生放送!
ここからは会場内での動画、カメラ、スマホ撮影は一切禁止。今回のゲストは、三山ひろしさんと小林幸子さんでした。
選ばれし全20組が歌唱した、本番。会場内は緊張感もありましたが、何より皆さんの楽しんで歌っている様子や一生懸命な姿に、たくさん元気をもらいました。
この後は20分ほど休憩を挟んだのち、改めて今回のチャンピオンが優勝トロフィーを持ってステージへ。
今年亡くなったお父さんへ…生前よく一緒に歌っていた想い出の曲をもう一度…。優勝曲「木蓮の涙(STARDUSTREVUE)」のフルバージョンを披露してくれました。このチャンピオンの歌唱中、ステージ後方で見守る出場者には優勝トロフィーが順番に回される一幕も。
予選を勝ち抜いた出場者。そして厳しい競争倍率にも関わらず当選したラッキーな観客席にとって最高のご褒美が、生放送後のパフォーマンスタイムかもしれません。
20組の出場者のうち、基山町在住者からは2組の合格者が出ました。
さらに、「道南夫婦船(島津亜矢)」を歌った基山町在住の重永ミツエさんが、特別賞を受賞!本番終了直後、ご本人に話をうかがうことができました。
今の元気なお姿からは想像できませんが、実は交通事故に遭い、3年間寝たきりの闘病生活を送っていたミツエさん。その後も10年もの間、治療やリハビリに専念。5年前から、ようやく杖なしで歩けるようになりました。
しかしその矢先、不運にも2度目の交通事故で圧迫骨折し、またも入院となってしまいます。
——のど自慢に出ることが人生の目標で、夢なのに…。
実はミツエさん、昔からとにかく歌が大好きで、県内で行われたのど自慢の予選会出場を5回も経験しているほど!長い闘病生活でも、のど自慢出場をどうしても諦められない。そんな前向きで明るい強い想いが、今回の奇跡を生んだのです。
懸命のリハビリを経て、大好きだったカラオケ教室に通えるまで回復。そして意を決し…念願の、しかも地元・基山町で開催されるのど自慢にエントリー。カラオケ教室の先生の熱心な指導のもと、本番当日はとにかく楽しんで自分流に歌うことを意識して臨んだそう。
「これまでずっと側で応援してくれた、孫、家族、友達、そして大好きな歌のおかげで頑張れました」と晴れやかに語ってくださった、ミツエさん。
のど自慢は、ただ1人1人が歌うだけではなく、それぞれに歌や歌詞にドラマや思い入れがあり、その声を多くの視聴者に届ける番組。ミツエさんのように、歌が好き、のど自慢が好き、という気持ちが奇跡と喜びを生む番組。
だからこそ、こうして日本全国で、長く愛され続けているに違いないと実感できた会場取材でした。
次回、のど自慢が基山町へやって来る日はまたおそらく10年後でしょうか。
その時には、どんなドラマが待っているのか。楽しみです。
取材・文:國松枝里花
撮影:宮本薫