2018年7月、西日本各地を未曾有の豪雨が襲いました。それから1ヶ月がたち、被災の深刻さ、復旧作業の過酷さが連日報道されています。今なお、行方不明者の捜索も続いています。
また報道されずとも、豪雨被害を経験し復旧活動が行われている地域も、まだまだたくさんあることでしょう。
一方で、昨年の同じ時期に起こった、九州北部豪雨による被害も忘れるわけにはいきません。
2017年7月5日。
九州北部で発生した集中豪雨により、福岡県朝倉市と東峰町、そして大分県日田市を中心に計40名の死者が出る甚大な被害が発生(行方不明者は2名)。その痛ましい爪痕は全国に向けて、連日のように報道されました。
なかでも、朝倉市は佐賀県基山町から車で片道40分ほど。
「朝倉三連水車」などがある身近な観光地として、日帰りでお出かけできる人気スポットです。被害が拡大した当日は基山町近郊でも大雨が続いており、朝倉地区を中心とする被害状況にショックを受けた町民も多かったのではないでしょうか。
それから1年。
私たちにとって行き慣れた観光地区の当時の様子、そして復興しつつある現在の様子を直接見聞きしたいと、2018年6月某日、現地へ取材に行っていました。
今回の取材先は、九州北部豪雨による被害のあった地域のほんの一例。今なお復旧復興の見通しが立たない場所があり、避難生活を続けていらっしゃる方も多くいます。
今月の大字基山は、全3回にわたるシリーズ「朝倉のいま」と題して、朝倉でお会いできた方々のお話と復興途中の様子を中心に、レポート記事をお届けします。
私たちが朝倉入りして始めに訪れたのは、老舗の藤井養蜂場。
工場直売店の「フジイのはちみつ」は国産はもちろんのこと、世界各国の多種多様な花から取れた蜂蜜を取り扱いしている専門店です。
お店に隣接する蜂蜜工場は見学ができ、みつばちのことを楽しく学ぶことができる資料館も。実際にみつばちが蜜を作る巣箱の観察までできる、蜂蜜ワールドを五感で体験できるスポットとして、毎年多くの方が訪れる場所です。
同じ敷地内にあるカフェスペースの一番人気は、毎月違った味が楽しめる「はちむつソフトクリーム」。他にも原料は蜂蜜のみという、その名も「ばっかり万十」や、「はちみつカレー」といった蜂蜜を使用した商品がたくさんが販売されています。
お店でお話をうかがったのは、正社員歴5年という若頭、勝山愛弥さん。しっかり者の22歳です。
愛弥さんは、その日もいつも通り自宅から車で出勤しました。
外で降り続く雨は、まるでバケツをひっくり返したようなどしゃ降り…。すでにあちこちで警報や注意報も出だしていたこともあり、客足は少なかったそうです。
そして17時過ぎ。いつものように、いそいそと閉店準備に取り掛かっていると突然、瞬く間に、あらゆる出入り口から水が…!
あっという間に、店内には泥水があふれたそうです。
ほどなくして膝下くらいまで一気に水位が上ってきたため、恐怖心と闘いながらも急いで商品を上の棚へ上げる作業をしました。
そして必死に作業を続けながら、ふと、大事なことに気が付きます。
外の巣箱にいる、みつばちたちは!?
急いでスタッフが巣箱のある場所へ向かうと…。
そこに10箱あった巣箱すべてが水に浸かり、見るも無残な形で水面に浮かんでいたそうです。みつばちたちは、全滅していました。
普段からみつばちは、雨や寒い日などはあまり外へは出ず、巣の中で過ごしているのだそうです。雨が激しく降っていた当時も、きっとみんな巣の中にいたはず…と目を落とす愛弥さん。
さらに雨は降り続き、商品を片付けている間にもいつ水位がさらに上がるか分からない…。とにかくスタッフ達の命を守るため、直売所の隣にある二階建ての事務所に避難しようと店内から出るも、濁流が流れていて非常に危険。